2021.07.26 ヤマハ発動機、工場の自動搬送ソリューション開発理論値生産によるスマートファクトリービークル実用化
自動運転技術を搭載したスマートファクトリービークル
ヤマハ発動機は、ティアフォー(東京オフィス=東京都文京区)と、工場敷地内をはじめとした自動搬送ソリューション事業を行う合弁会社・イヴオートノミー(静岡県袋井市)を2020年3月に設立。同4月から稼働させ、新たに開発したスマートファクトリービークルを生産現場での実運用を通じて、扱いやすく汎用(はんよう)性の高い低コストの自動搬送ソリューションの開発に取り組んでいる。
ティアフォーは、Autoware(LinuxとROSをベースとしたオープンソースの自動運転ソフトウエア)をリードする企業として、国内外でさまざまな実証実験を重ねている。Autowareのエコシステムを活用し、多彩な自動運転に関連したサービスを開発、提供する。
合弁会社のイヴオートノミーは、ティアフォーが開発を主導するAutowareの技術と、ヤマハ発動機のランドカーをはじめとした高い信頼性を持つ車体開発技術を掛け合わせて、自動搬送ソリューションの開発を推進している。工場内物流の需要変動にも対応できるよう、初期費用を抑えることが可能なサブスクリプション型のサービス開発・アフターサポートの提供も目指している。
工場の物流現場は、高まる多品種少量生産のニーズと慢性的な人手不足により、作業員配置を前提とした従来型の設備・運用では、需要に合わせた効率的な生産体制の維持が難しくなってきている。
この課題に対し、ヤマハ発動機とイヴオートノミーは、自動搬送ソリューションのパイロット製品であるスマートファクトリービークルの共同開発に取り組み、ヤマハ発動機浜北工場(浜松市浜北区)において、工場内物流ラインでの実運用を行っている。今後は、ヤマハ発動機の国内外の製造工場をはじめ、広く普及を目指す。
イヴオートノミーが提供する自動搬送ソリューションは、Industry4.0やAI(人工知能)、IoTといった手段を用いて生産現場に変革をもたらす一般的なスマートファクトリーとは異なり、「ヤマハ発動機流スマートファクトリー」ともいうべきもの。
生産に関わる全ての作業を「価値」と「無価値」に分類し、あるべき姿(理論値)に向けて、価値作業の比率を高めていく改善手法である理論値生産を活用し、理論値と実効値の間に生まれる差異やバラつきをリアルタイムで捉えることを、スマートファクトリー化の目的と定義している。
例えば、搬送人件費や高額なAGV(自動搬送車)の台数を減らすために、搬送ロットが大きくなり、課題そのものが見えにくくなっていることや、短距離搬送ではさらに投資に対して効果が成立しにくいという課題を見つけ、デジタルツールでひも付けて分析・可視化する。分析結果から、導入や運用の負荷が小さく、トイブロックのようにモジュールの組み合わせで変化に対応できる「低コストの小型AGV」の開発を進めている。
現在、浜北工場の二輪車用ホイールの鋳造現場では、時間当たりの出来高や品質、在庫、整備故障、搬送頻度などを分析した結果、自社開発した同社製電動車いすをベースとしたスマートファクトリービークルが部品の搬送に稼働している。
背景には「スマートファクトリーの主役はあくまでも人。スマート化によって価値のある作業に集中することで、個々が成長し、会社も成長する」(同社)という発想がある。
実運用を通した課題の洗い出し・改善により、顧客に提供できる機能水準、信頼性の高い自動搬送ソリューションの完成を目指す。