2021.09.15 NHK広島 山口太一局長に聞く新局長就任、今後の取り組み 広島・中国地方の応援団長に 地域を日本、世界に発信
山口 局長
7月2日付でNHK広島拠点放送局長に就任した山口太一氏に広島に赴任しての印象や今後の抱負などについて聞いた。
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―広島の印象についてお聞かせください。
山口局長 道路がすごく広くて街全体が整っているという印象を受けた。緑や川が多く、自然が近くにあるという印象。広島とご縁があって住むことに感謝している。市内は休みの日にかなり歩いたが、いろんなものがぎゅっと詰まった感じで便利だと思う。4連休の時にコロナが落ち着いたので、レンタカーを借りて宮島や呉、尾道、しまなみ海道などを訪問した。
―広島局勤務ならではの思い、やりがいはありますか。
「8.6」が頭に浮かぶ
山口局長 広島異動の内示を受けたときに「8.6」がすぐ頭に思い浮かんだ。このことは片時も忘れてはいけないと思う。単身赴任だが、マンションは平和公園のすぐ隣を借りた。毎日平和公園を歩き、原爆ドームを見て過ごしている。コロナ禍でも西洋の方が多く来られている。NHKスペシャルでは、原爆の悲惨さを調査した(「原爆初動調査 隠された真実」)真実が隠蔽(いんぺい)されたその過程をまとめた。ETV特集は原爆研究に巻き込まれていく物理学者の話でいずれも力作だと思う。
―コロナ禍でのマスコミの役割をどう考えますか。
山口局長 情報の正確さが一番だと思う。誤った情報は無用な不安や対立を招く。NHKを含めて新聞、テレビなど伝統的なメディアはファクトを大切にしなければと思う。メディアの世界は今、宇宙のように膨れ上がっている。NHKを含めて新聞、テレビは正確な情報を発信していかなければいけない。NHKに課せられた使命として物事は多面性がある。いろいろな意見があるので、できるだけ多く伝えていくことだと思う。オリンピック開催の是非、緊急事態宣言の発出のタイミングなどさまざまな意見があるが、いろんな立場の人たちの意見を発信することが大切と思う。
ツイッターで「あのときを取材中」を発信している。ツイッターの良さを感じている。
―今年度の広島放送局の重点施策は。
山口局長 広島を含めて中国地方を元気にしたい。広島のおいしいもの、良い伝統、心温まる話などを日本全国、それから世界に発信して地域貢献していきたい。まだ知られていない話がある。広島を含めた中国地方の応援団長のつもりで頑張りたい。広島テレビとのコラボ番組も大変うまくいっている。
―防災・減災に対する取り組みにどのようなものがありますか。
連携して命を守る
山口局長 8月の長雨でも避難の呼び掛けはしてきたが、どれだけ避難につながったかを検証する必要がある。避難につながっていないとすれば、どのように避難を促していくか研究すべきだと思う。NHKだけでは限界があるので、自治体や出先機関、郵便局、ケーブルテレビなどと連携して命を守る取り組みをしたい。
―目標を聞かせてください。
山口局長 広島を含めた中国地方を元気にしたい。政治の取材が長かったが、一番印象に残っているのは東日本大震災の時、官邸キャップだったが原発が爆発し日本がどうなってしまうかと肝を冷やした。今になると物的証拠などで分かってくるが、事故発生直後は当事者も誰も分からなかった。三十数年の記者生活の中で一番印象深い体験だった。
【プロフィル】
1965年11月9日生まれ。千葉県出身。88年4月NHK入局。2013年6月報道局ニュース7編集責任者。16年5月報道局政治部長。19年6月報道局編集主幹・ニュース制作部長。21年7月広島拠点放送局長。現在に至る。
▽好きな言葉=不易流行。「いい習慣は守るべきだし、変えるべきものは変えたい」永田町での長い記者生活で実感しているという。(広島)