2021.09.21 【中部産業特集】自動運転のビジネスモデル構築へ名古屋市鶴舞の公道で実証

自動運転車両「Nanamobi」

マップを基に自動運行マップを基に自動運行

一般試乗で実用性向上

 愛知県は2016年度から自動運転の実証実験を積み重ねてきた。今年度は、自動運転のビジネスモデル構築を目指し、WILLER(大阪市)、名鉄バス(名古屋市)、ST Engineering(シンガポール)、イオンタウン(千葉市)など事業者が名古屋工業大学(名古屋市)周辺の公道で、自動運転車を実走行させている。10月から一般試乗をスタートする予定。

 2種のLiDARと高精度測位システム

 車両は仏NAVYA(ナビヤ)社製の「ARMA(アルマ)」で愛称は「Nanamobi」。自動運転に必要なセンサー、測位システムなどを搭載したバスタイプの電気自動車で、運転席、ハンドル、アクセル、ブレーキペダルはない。走行を始める前に作成されたマップを基準に自動運行し、非常時の手動運転モードではゲーム機のコントローラーで車両を操作する。安全のため、セーフティーオペレーター(運転者)と保安員が同乗している。

 センサーは360度監視する「3D LiDAR」と路面24センチ以上の高さの障害物の動きを検知する「2D LiDAR」を搭載。高精度なGNSS(衛星測位システム)で位置情報を補正し、数センチメートル単位で車両の位置を推定する。

 最高時速は19キロメートル、航続時間は9時間(エアコン利用時4時間)。充電時間は、急速充電で約5.5時間/通常充電で約12.5時間。定員は14人(立席を使わない場合8人)。

 公道で一般市民も試乗

 一般利用では6人/便の試乗(昼間)が可能。ルートは、イオンタウン千種や名大病院駐車場を通る「鶴舞駅ルート」と、イオンタウン千種を通る「名工大ルート」の二つ。いずれも公道を走るのが特徴。関係者による夜間走行も実施する。

 実証は企業グループで実施。担当分野は①海外の商用運行で自動運転の知見を持つWILLERがサービスの企画・開発、システム・車両を提供②名鉄バスはサービスの企画・開発、運行計画の策定・運行③ST Engineeringが自動運転システムの技術面でサポート④ソフトバンクの子会社、BOLDLY(ボードリー)が3Dマップを作成、車両設定、操作者のトレーニング⑤名古屋工業大学がニューノーマル(新しい日常)の移動を通したコミュニティー形成の研究⑥イオンタウンが将来的なサービスモデルの検討--など。

 検証するのは①一般車両との混在交通による安全性や運行計画の妥当性②定時定路線の運行時の自動運転化の実用性③自動運転に対する一般市民の受容性の醸成やコミュニティー創造--など。

 自動運転の実用性や事業性の向上を検証し、サービスモデルを検討。運転手不足や環境問題の解決、QOLのさらなる向上を目指している。

 鶴舞拠点に産業振興

 10日は鶴舞駅周辺で県職員など関係者による走行を実施した。

 愛知県は交通死亡事故が多く、自動運転の実用化で交通事故の減少に貢献し、免許を持っていない人の移動手段確保につなげたい考えだ。

 鶴舞には24年10月、スタートアップ企業の創出・育成・展開を図るための中核支援施設「STATION Ai(ステーションエーアイ)」の供用がスタートする予定。愛知県次世代産業室の中野茂寛主査は「鶴舞を拠点に、自動運転の分野を含めて関連企業を育成し、産業の振興につなげたい」と力を込める。