2021.10.05 双日、スペインで電力小売り参入、日本企業で初再エネ電力サービス、日本への展開も

バルセロナにあるネクサス・エネルジア本社

本社内のエントランス本社内のエントランス

 総合商社の双日は、日本企業として初めてスペインで電力小売事業に参入し、100%再生可能エネルギー由来の電力販売を現地で手掛ける大手事業者の増資を引き受ける。電力小売りに参画すること自体が初めてで、環境先進地のスペインで電力小売りや関連サービスのノウハウを習得した上で、日本などで事業展開を目指す。

 バルセロナに本社を置く電力・ガス小売事業者「ネクサス・エネルジア」の株式を引き受ける契約を8月に締結した。出資額などは非公表だが、出資となれば双日が筆頭株主になる。

 ネクサス・エネルジアは2000年に創業し、ポルトガルやメキシコでも電力小売事業を展開している。欧州でも大きな電力市場を持つスペインにおいて、旧国営電力会社5社を除くと年間電力販売量でトップ5に入る事業者だという。

 同社が強みを持つのが官公庁や中小企業向けの販売で、提案型の営業を進め、法人顧客への電力使用量の最適化サービスや省エネサービスなどを展開していることが大きく影響。販売電力の100%を再エネで賄っていることも特徴だ。

 スペインはサッカーどころ。本社があるバルセロナには世界的人気の有力クラブチームもある。同社はサッカークラブのファンクラブ会員向けに、ファンサービスとして試合のチケットやサイン入りグッズ、ノベルティーのプレゼントなどを組み込んだ電力プランなども提供。17~19年の3年間にわたり、毎年2割超のペースで売り上げを拡大させてきた成長企業だ。

 スペインの電力市場は98年から段階的に自由化が進み、03年に全面自由化した。脱炭素化の流れの中で、中小企業や公共機関などが、旧国営電力会社と結んでいた電力契約を、100%再エネ由来の電力供給など独自サービスを持つ新電力に切り替える動きが活発だという。

 また、国内の日射や風況などの条件が良く、再エネの低コスト化が進んでいる上、政府の政策支援なども重なり、近年では、既に価格競争力の面で化石燃料由来の電源を上回る水準になっているという。スペインで電力小売りに参入することで、「当社が欧州で期待する知見が十分に得られると見込まれた」(双日)。

 双日は09年に太陽光発電事業に参入以降、国内外でメガソーラーの運営などを手掛けてきた。そうしたノウハウを、ネクサス・エネルジアの販売ネットワークなどと掛け合わせ、新たな関連サービスとして拡大させる方針。「電力以外のサービスと電力を足し合わせて提供する」(同社)ことを目指し、電気やガスを、蓄電池のリースやシェアリングサービスなどとセットにして販売していく。スペインで新たな再エネ電源を開発することも視野に置いている。

 将来的には日本や、成長が続く東南アジア地域で電力サービス事業などを展開していく計画だ。「欧州で培ったノウハウを生かし、ゆくゆくは横展開したい。電力供給だけでなく、付加価値を付けた電力サービス事業も手掛けていく」(同社)。