2021.10.28 【中・四国版】アクセス(広島県府中町) 「レーシングシミュレーター」を開発・販売
同社製品のレーシングシミュレーター
レーシングシミュレーターの開発・販売、レンタルなどを行うアクセス(広島県府中町、松田利之社長)は、倉庫棟の一角に本社を構え、社員5人と小規模ながら業界では高い知名度を誇る。自社製品の7軸シリンダー制御レーシングシミュレーターで特許も取得している。
1989年創業。シミュレーターを中心に扱い始めたのは、10年ほど前から。もともと車やレース好きだった松田社長が、趣味の一つとして友人と開発を始めたのがきっかけで、今では同社の主力業務となっている。
「創業時、会社としてはほかの業務を行っており、この開発を売り上げにつなげるなんて考えていなかった」(松田社長)という。
開発を手掛けた当時のシミュレーターは、画面を通しての視覚だけの体験だった。それでは本物のドライビングとギャップが生じてしまうと考えた松田社長たちは、振動や音、車体の動きなど、よりリアルなシミュレーションを実現すべく製品開発を始めた。ドライバーの経験があるからこその感覚を伝え、本物のドライビングを体全体で体感できるよう、機能をふんだんに詰め込み、製品を作り上げた。
完成した製品は、レーシングドライバーなどが目にするイベントで展示したが、「最初は全く売れず。実績も何もないのに高額で、必要性も分かってもらえないことが多かった」(松田社長)と振り返る。
その流れを変えたのは、ある会社が「この製品を売りたい」と声を掛けてきたことだ。現在も同社の代理店となっているが、それをきっかけにだんだんと業界内での認知度が上がっていった。プロドライバーの意見も参考にしながら開発を続けた同社は、徐々に顧客を獲得していき、現在のような業務形態へと変化していく。
◇eスポーツ関連の需要も
同社の顧客は、法人客と個人客とが半分ずつ。新型コロナウイルスの感染拡大前は、イベントや試乗会に製品のレンタルを依頼され、展示と合わせて営業活動を行い、新規客を獲得してきた。
趣味でレースを楽しむ人がドライビングスキルの向上など練習目的で購入することも。これまでになかった製品に魅力を感じ、体験後にそのまま購入手続きを希望する人も少なくない。法人客は自動車やタイヤのメーカー、研究開発目的で学校が購入するなど、購入の理由は多岐にわたる。
当初は「一人でも多くの方に、レーシングシミュレーターを体験してもらい、モータースポーツの普及に役に立ちたい」とサーキットを想定して開発したが、製品の認知度が高まるにつれ、自転車や船、重機などほかの乗り物用も開発してほしいと依頼が来るようになった。
最近では、eスポーツ関連での需要も増えており、エディオン広島本店(広島市中区)の西館6階ゲーミングPC・DOS/Vフロアにも、体験用として同社製品が展示されている。
今後の目標は、さまざまなパターンのシミュレーターを開発し、充実させ、法人販売の比率を高めていくこと。松田社長は「私も含めて開発者である従業員たちが、ドライバーの気持ちも分かるところが当社の強み。どんな機能が必要か、どんな点を重視するか。顧客が求めるポイントをきちんとくみ取り、製品に反映できる」と語る。
◇主催レースも開催
業務内容は広がっているが、「日本のモータースポーツ界を盛り上げたい」という同社のテーマは変わっておらず、主催レースなども開催している。
「ACCESS RACING SIMULATOR CUP」は、シミュレータードライバーのトップを決める大会。サーキットを走行するレースより参加する側のハードルが低く、昨年の予選登録者は400人と年々多くなっている。
松田社長は「近年はコロナ禍の影響で全面的にオンライン開催となってしまっているが、再開できるようになったら力を入れ、盛り上げていきたい」と意気込みを語った。