2021.10.29 【石油暖房特集】石油FH、今年度出荷183万台予測灯油価格の上昇を懸念
石油ファンヒーターの需要は年末がピーク
冬に向けて寒さが厳しさを増し始めた。暖房能力に強みのある石油暖房機器は、年末までが需要のヤマ場となる。主力の石油ファンヒーターは、日本ガス石油機器工業会の予測によると今年度、約183万台の出荷が見込まれている。ただ、寒波の到来などで急激に需要が膨らむこともあり、天候をにらみながら柔軟な供給体制を整えることがメーカーには求められるところだ。
平年並みか低い
気象庁は9月に発表した冬(12~2月)の天候見通しで、気温について、西日本と沖縄・奄美では寒気の影響を受けやすく「平年並みか低い」という予報を出した。北・東日本ではほぼ平年並みを見込んでいる。今月発表された最新の3カ月予報(11~1月)でも、西日本を中心に冬型の気圧配置がやや強く、「寒気の影響を受けやすい」との見通しを示した。
季節商品である石油ファンヒーターは、天候の影響を非常に受けやすい。2019年度は暖冬の影響で前年から2割近く需要が落ち込んだものの、20年度は寒波が到来して逆に2割伸長。天候によって需要は10万台単位で変動する。
石油ファンヒーターは、北海道や東北といった寒冷地での支持が厚い。こうした地域でも暖房能力を高めた寒冷地仕様のエアコンの普及が進みつつあるが、寒さの厳しい朝や冷え切った夜の帰宅直後などに素早く点火できる石油ファンヒーターは重宝されている。加えて、足元から温めてくれる暖房能力が強みだ。
「デザイン家電」が人気を集める近年では、インテリアになじむデザインを採用した機種も多い。リビングに置かれていても違和感のない外観を実現しているものも増えてきた。
一方、石油ファンヒーターには、本体を稼働する電気と、燃料である灯油が必要となる。今年は灯油の値上がりが続いていることから、懸念材料として指摘されている。
資源エネルギー庁の公表データによると、10月27日時点の灯油価格は1リットル当たり106.1円、18リットル当たりの価格は1910円だった。前週から18リットル当たり50円値上がりし、8週連続で上がっている。過去には08年8月に18リットル当たり2378円という高値を記録したこともあるが、1910円台としては14年10月の1918円以来の価格となる。
以前は灯油価格が製油ファンヒーターの需要に影響を与える傾向が見られたが、近年は、さほど影響はなかった。
しかし今年度は、灯油価格が約7年ぶりの高値である上、新型コロナ禍が続いていることから今冬も自宅で過ごす時間が増え、石油ファンヒーターを利用する機会も増える。家計にも影響するはずで、使用を控えようとする動きが出る可能性はある。
各社、節約機能など盛り込む
メーカー側も対策に乗りだしている。
石油ファンヒーター大手のダイニチ工業は25日、灯油の使用量を節約できる三つのポイントを紹介するニュースレターを発信した。それによると、石油ファンヒーターを置くのに最適な場所は、窓の前など「冷気が入ってくる場所」。窓に背を向けて置くことで冷たい空気を石油ファンヒーターが吸い込み、暖かい空気に変えて部屋に循環させるという。
また、背面の空気取り入れ口を掃除することも重要。ほこりがたまると空気を取り込みにくくなり、温風が弱まる原因になってしまう。より暖めようと無駄な運転につながりかねず、空気取り入れ口を掃除機で吸い取るだけの簡単なメンテナンスで、効果的に節約できるとしている。
省エネ志向の高まりを受け、石油ファンヒーター自体にもそうした機能が盛り込まれている。
例えば、人感センサーによって人の在・不在を検知して、人がいないときには自動で消火するなど、エコモードを備えている。こうした機能を積極的に活用することで、シーズンを通した灯油代や電気代の節約につなげやすくなる。
灯油価格の値上がりは、石油ストーブにも影響を及ぼす。今年度の出荷は約90万台と予想されており、石油ファンヒーターに比べると約半分の市場規模。しかし、コロナの影響でその存在価値が見直され始めている側面もある。
11年3月に発生した東日本大震災後には、電気が必要ない暖房機器として石油ストーブの需要が増加。災害時や非常時に備える備蓄用途として一時的に活性化した形で、その後は需要が漸減傾向をたどっていた。
アウトドア人気
ただ、コロナがもたらした生活スタイルの変化で、アウトドアブームが加速。対流型ストーブや石油こんろにじわりと注目が集まり始めている。
特に対流型ストーブは、レトロなデザインがファン層を広げていた製品。アウトドアブームに乗ってファン層をさらに拡大しそうだ。アウトドア関連メーカーとコラボした製品も登場した。
緊急事態宣言は解除されたとはいえ、新型コロナ感染拡大に対する警戒感は続いている。この冬もおうち時間が長くなりそうだ。消費者の志向も刻々と変化しており、快適に過ごすため、石油暖房機器の存在感も増してきそうだ。