【電子部品総合特集】ハイテクフォーカスニチコン導電性高分子ハイブリッドアルミ、電解コンデンサーの最新技術動向

2022.01.11 【電子部品総合特集】ハイテクフォーカスニチコン導電性高分子ハイブリッドアルミ、電解コンデンサーの最新技術動向

125度高容量品「GYEシリーズ」

厳しい環境下でも安定性能

■はじめに

　近年、自動車を取り巻く環境は大きく変化している。環境問題の観点より、内燃機関からハイブリッド自動車（HV）、さらに電気自動車（EV）への移行が進み、先進運転支援システム（ADAS）に関わる安全関連技術や、自動運転機能を搭載した自動車開発が加速している。それらの機能に不可欠な自動ブレーキ、画像認識、センサー関連機器の開発も進んでおり、車載用電子部品の需要は増加している。

　上記のような車載用途で使用されるコンデンサーに対しては、高信頼性の要求が増えており、高温過酷環境への対応に加え、小型・高容量化、低ESR性能が求められている。

　ここでは、車載用途に最適な導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの最新技術動向および当社の製品開発について紹介する。

■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの特長

　一般的なアルミ電解コンデンサーは、誘電体皮膜を有する陽極箔（はく）と陰極箔の間にセパレーターを介して巻き取った素子に、電解質として電解液が含浸されている。電解質に導電性高分子を使用する導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの導電機構は電子伝導であり、イオン伝導である電解液と比較すると、その電導度は非常に高く約1万倍であるため、大幅な低ESR化が可能となる。

　一方、一般的なアルミ電解コンデンサーは、熱や外的要因で生じる誘電体皮膜の欠陥部を電解液で修復する機能を有しているが、導電性高分子の修復性能は電解液と比べて乏しく、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの漏れ電流実力値は相対的に高めになる。導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーでは、電解質に導電性高分子とそれに適した電解液を採用することで、導電性高分子の性能を損なわず、一般的なアルミ電解コンデンサー並みの低漏れ電流性能を実現することができる。

　これにより、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは周波数特性に優れ、車載用途で重視される低温領域下でもESR変化が小さく、寒冷地や高地などの厳しい環境下でも安定した性能を維持できる【図1参照】。ESRの経時変化においても一般的なアルミ電解コンデンサーと比べ小さく、高温環境で長時間使用しても電気的安定性能を維持できるため、許容リプル電流保証値の増大が可能となる。

　導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、一般的なアルミ電解コンデンサーと導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーのメリットを併せ持つコンデンサーであることから、大電流で使用されるEPS（電動パワーステアリング）、48V電源のマイルドハイブリッドや、ポンプ駆動用などの車載モーター制御回路を中心に需要が伸びている。

■今後の展望

　導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、低ESR、高リプル電流、広温度対応や耐久性に優れていることから、自動車用途のみならず、民生や産機用途でも需要が拡大することが予測される。特に自動車用途では、安全機能や自動運転の開発で各種センサーが拡充され、新たな電動化も進むと考えられる。コンデンサーの搭載点数の増加に伴い、高性能なコンデンサーへの期待は今後さらに増えることが予想され、当社も長寿命化、高耐熱化、高リプル化、高容量化に向けた開発を加速する。

高容量化ニーズに対応

■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーのシリーズ紹介

　「GYCシリーズ」

　125度4000時間保証の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYAシリーズ」を開発、2017年から量産を開始している。19年からは市場要求の高まっている高温度化・高リプル化に対応するため、高温度対応品として135度4000時間保証の「GYCシリーズ」をラインアップし、量産を開始した。

　今回、φ6.3×5.8L、φ6.3×7.7L、φ8×10L、φ10×10Lの製品サイズに、新たにφ10×12.5Lを追加しており、最大1.3倍の高リプル化対応が可能。

　「GYEシリーズ」

　導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーでは、一般的なアルミ電解コンデンサーで員数選定する場合に、許容リプル電流がボトルネックであったアプリケーションで、大幅な小型化や員数削減が可能になったことで、高容量化ニーズが高まっている。