2022.02.01 【コネクター特集】産機関連分野が好調高付加価値品が需要押し上げ

半導体製造装置向けの多極一括嵌合(かんごう)可能な角型コネクター

 コネクターの市場が拡大している。第5世代移動通信規格5Gの本格化や、自動車の電子化・電動化進展、社会全体のデジタル変革やスマート化などが、コネクターの技術革新を促進し、付加価値の高いコネクターのグローバル需要を押し上げている。コネクターメーカー各社は、今後も次世代ニーズに向けたコネクション/接続技術の開発と、グローバルマーケティングに努めることで、今後も中長期の事業拡大を目指す。

 コネクターのグローバル需要は、世界経済成長の波に乗り、2013年から18年にかけて長期にわたる拡大基調が続いた。調査会社B&Aのレポートでも世界のコネクター市場は、17年、18年と2年連続で2桁成長を達成した。

 一方、18年秋以降は、米中貿易摩擦激化に伴う中国経済停滞や設備投資減退などにより需要が軟化。19年も米中摩擦の長期化が自動車需要や設備投資需要に影響を与え、年間を通じて軟調な状況が続いた。

 20年の世界のコネクター需要は、年初段階では緩やかな回復が予想されていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が市場に大きな影響を与え、20年前半は自動車やFA・設備関連を中心に需要が大きく落ち込んだ。そうした中でも、コロナ禍による需要減は、20年4~5月頃に底入れし、6月以降は徐々に回復。早期の市場回復が進んだ中国市場に加え、7月以降は米国市場も回復し、夏場以降、米中がけん引する形でコネクター需要の回復が進展した。

 加えて、在宅・巣ごもり需要によるノートパソコンやタブレット端末、ゲーム機、白モノ家電需要の拡大や5Gスマートフォン需要、デジタルシフトに伴うデータセンター需要の増加なども、20年後半のコネクター需要回復を支えた。この結果、20年のコネクター世界需要は、19年比で軽微な落ち込みにとどまった。

 21年のコネクター需要も、20年秋以降の勢いが継続し、年間を通じて好調に推移した。調査会社などのレポートでは、21年のコネクター世界市場は20年比で2割を超える成長となった見込み。

 分野別では、需要回復が続いた自動車やハイエンドスマホなどのICT関連機器の増大に加え、FA機器や半導体製造装置などの産機関連需要が21年は大きく拡大し、大半の主要アプリケーションで良好な需要動向が続いている。加えて、サプライチェーンの混乱などを踏まえた、電子部品ユーザーの部品在庫積み増しの動きもコネクター受注を増大させている。

 近年のコネクター市場の成長を支えているのは、分野別では、電子化・電動化が進む自動車や5G化で高機能化が進むスマホ、自動化・省人化ニーズを背景とした産業機器、デジタルシフトや情報通信の高度化によるテレコム/データコム関連市場の拡大など。民生系では、ウエアラブル端末の需要増や巣ごもり関連での白モノ家電・住設機器の増加もコネクター需要を押し上げている。

 22年のコネクター市場も成長の継続が見込まれ、22年の世界需要は21年と比較して成長率は低下するものの、21年比では5%から6%程度の成長が予想されている。

 足元のコネクター需要は、引き続き堅調さが継続している。特に好調なのが、FA/工作機械や半導体製造装置関連などの産機関連分野。ICT関連は、中国系スマホで一部在庫調整などが見られているが、欧米系ハイエンドスマホなどは好調に需要が推移している。自動車向けも、半導体不足による自動車の減産が進む中でも、比較的堅調な受注推移が続いている。

技術革新が進展

 コネクターの主要マーケットである自動車、産業機器、携帯端末、通信インフラなどの産業分野では、いずれも大きな技術革新が進行している。こうした技術革新の進展が、今後もコネクター技術の高度化を促進し、コネクター需要を中長期で活性化していくことが予想されている。

 多くのコネクター企業が重視する自動車は、ADAS/自動運転化や電動化へのシフトが新たな高付加価値コネクタ需要を創出する。産業機器/ロボット関連では、AIやコネクテッドインダストリーなどをキーワードとした技術革新が付加価値の高いコネクターの需要を押し上げる。5G通信基地局やデータセンター需要の増加も、産機用コネクター需要を増大させる。

 コンシューマー系では、ウエアラブル機器の拡大やスマホメーカー各社の5Gミリ波端末の投入強化などがコネクター需要をけん引することが期待される。

 医療機器/ヘルスケア関連や4K/8K放送システム、セキュリティー機器向けの需要増も期待されている。

安定成長をめざす

 IT・エレクトロニクス技術が高度化し、多様な産業分野で電子化やネットワーク化、大容量高速伝送化が進む中、接続技術の重要性は一段と増していく。コネクター各社は、中長期視点での技術戦略やマーケティング活動を強化し、顧客へのソリューション提案力を高めることで、今後も安定的な成長を目指す。