2022.04.07 【ウエアラブル機器用部品技術特集】IoT・ウェアラブルデバイスの接続性・連続性に革新をもたらす「センサ信号のコンテナフォーマット」の国際標準化へ審議開始

ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術 概念図

ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術が開く未来像ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術が開く未来像

 広島市立大学、TIS、エー・アンド・デイ、帝人の4者が中心となり「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット※1」に関する国際標準規格の提案を行い、IEC※2において、2021年12月に承認された。今後は、IEC 63430として2023年度の発行を目指して規格文書の完成度を上げる作業と審議を行っていく。また、これを機に、ウェアラブルデバイスをはじめとする広範なIoT・サービスに係る事業者・関係者と幅広く連携し、今後の普及拡大に向けさまざまな施策を推進していく。

概要、背景

 近年、日常生活での体調管理や運動時の活動測定などを目的としたIoT・ウェアラブルデバイスの普及・利活用が急速に拡大している。一方で、取り扱う信号の形式などがメーカーや機器ごとに異なるため、〝メーカーA社とメーカーB社の機器を同時に接続できず、データ連携や共有がしづらい〟など、利便性に多くの課題を抱えている。

 4者は、経済産業省公募※3による「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」の採択を契機として、ウェアラブルデバイスでの上位レイヤーから下位レイヤーまでのセンサー信号を共通的に処理できるよう、信号のやり取りを「コンテナ」化する技術仕様一連の標準化準備(国際標準規格案策定)を行ってきた。

 そして2021年10月に、IECのTC100※4に対し、新規国際標準規格として「ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術」の提案を行い、同年12月に承認された。

 コンテナフォーマット技術によって標準化されたセンサー信号が流通することで、さまざまなIoT・ウェアラブルデバイス間の接続性が高まり、測定したデータを容易に共有・連携することが可能となる。4者は、国内外のエキスパート・専門家と議論しながら、引き続き国際標準発行に向け活動していく。

ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術概要

 「コンテナフォーマット」は、ウェアラブルセンサ信号に係る互換性や5Gシステムと連携するIoTへの適応性を高め、データの共有・利活用を柔軟に行える、標準化の核となる技術。Sensor Device(測定)Sensor Deviceは、センサ素子が得る信号をデジタルデータに変換して、Edge Computing Deviceに送出する。

利活用分野・領域

 多様なIoTサービスやウェアラブルデバイスと親和性の高いウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、まず「ヘルスケア・医療」領域での活用を想定している。

 Society5.0で目指す超スマート社会の実現には、〝高齢者対策に資するサービスの開発やニーズの掘り起こし〟が重要課題と目されており、AAL※6の重要性が一層高まると予想されている。

 しかし一方で、AALに係るセンサやデバイスのメーカー・システム開発企業がそれぞれ別個に開発を進め、ソリューション・サービス事業者も各々への個別適応に終始する取り組みのままでは、実現スピードが遅滞し早期の事業規模拡大への懸念も生じかねない。

 国際標準規格を採用することで、自社の製品やサービスと他社との連携において迅速かつ主導的な展開が図れるとともに、国内はもとより海外と共通のデバイス、システムやサービスを構築することができ、国内で成功したモデルをグローバルに展開することが容易になる。

 標準化されたウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、製造、流通、金融、建設、運輸、サービス、エネルギー、公共など社会のさまざまな分野・領域への適用が可能であり、「スマートシティ」実現のキーテクノロジーの一つとして広範に普及活用されることによって、事業の競争力強化や新たな市場の創造が実現するものと考える。

今後の展望

 今後は、2023年の国際規格発行に向けた諸活動と並行して、リファレンス・システム※7の開発を計画している。さらに、デバイスをはじめプラットフォーム、ソリューションなどウェアラブルセンサ信号を利活用し得るユーザー・関係諸団体など幅広い層の参画を念頭に、ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の普及に向けた組織の設立を検討していく。

 IoT・ウェアラブルデバイスの接続性・連携性に革新をもたらし、日本発の新たな事業・産業の創出に道を開く「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット」の国際標準化に、注目していただきたい。

 〈資料提供:広島市立大学、TIS、エー・アンド・デイ、帝人〉

※1 Data Container format for wearable sensor

※2 IEC:International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)

※3 (経済産業省:令和2年度募省13)省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」(令和2年度から3年間)

※4 IEC TC(Technical Committee)100:オーディオ、ビデオ、マルチメディアシステムおよび機器の技術分野に関連する国際標準化を担当する技術委員会

※5 BAN:Body Area Networkは、人体の周囲にネットワークを構築することで、バイタルサイン等データ測定適所に装着した複数センサーの計測情報を集約する近距離無線通信技術

※6 AAL:Active Assisted Living(自立生活支援)

※7 リファレンス・システム:考案したウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の機能や実装の検証用システム