2022.07.08 【電子部品技術総合特集】中長期成長へ研究・技術開発加速新技術、脱炭素化などに対応
電子部品メーカー各社は、中長期の成長に向けた研究開発、技術開発に継続的に取り組んでいる。現在のエレクトロニクス市場は、「AI(人工知能)」「ビッグデータ」「IoT」「5G(第5世代移動通信規格)」といった新たな技術潮流による大変革期を迎えており、コロナ禍もデジタル変革の動きをより加速させた。さらに、世界的な「脱炭素化」要求の高まりや少子高齢化に伴う自動化ニーズ、SDGsへの関心も新たなイノベーションを求めている。各社はこれらを見据え、コア技術に磨きをかけるとともに中長期視点のR&Dを一段と強化し、社会課題に対する技術ソリューションに全力を挙げる。
わが国の電子部品産業は、IT・エレクトロニクス産業や自動車産業、各種インフラ分野の発展を支える基盤として、国内外で高く評価されている。
電子部品メーカー各社の成長の原動力は、イノベーションの源泉となる技術開発。各社は、既存顧客の課題解決に向けた技術開発に取り組むとともに、将来の技術変革や社会の在り方の変化などに基づく、バックキャストによる中長期の開発ロードマップを策定。同ロードマップに沿って、要素技術の開発やタイムリーな新製品開発を進めている。
電子部品のアプリケーション別では、多くの企業が最重点分野に挙げるのが自動車分野。各社は「CASE」「MaaS」などをメガトレンドとする自動車市場への変革に照準を合わせ、次世代自動車向けのR&Dを展開する。
通信分野では、5Gの本格化に向け、端末・インフラの両面で高性能な5G/ミリ波対応デバイスの開発が盛ん。同時に、5Gが引き起こすとされるさまざまな産業分野でのイノベーションや車載5Gなどに向けた技術開発も活発だ。さらに、次世代の6G(第6世代移動通信規格)をにらんだ研究開発や技術マーケティングも進行している。
産業機器分野では、世界的な自動化ニーズの高まりに対応し、スマートファクトリー化をサポートする制御部品などの開発が進む。データ通信容量増大に対応するための高速大容量デバイスや次世代パワーデバイス開発も加速している。先端医療分野に向けたデバイスソリューションの提案にも力が注がれる。
現在の世界のメガトレンドとして指摘されるのは「世界人口の爆発的増加」「先進国での高齢化」「都市化の進展」など。企業には「SDGs」への取り組みや「ESG経営」がより重視されている。中でも地球環境問題は世界共通の重要課題として強く意識され、「カーボンニュートラル」達成が重要視されている。
電子部品各社もこうした動きに呼応し、環境保全のための取り組みに注力。事業活動におけるCO2排出量削減を加速するとともに、社会全体の脱炭素化に貢献する新製品開発や新技術開発に全力を挙げる。
昨今のコロナ禍は、世の中全体のデジタルシフトを確実に加速させた。一方、昨今の業界は、米中摩擦激化やロシアのウクライナ侵攻といった地政学リスクの高まりや半導体不足の長期化、急激なインフレ、急速な為替変動など、予測不能のリスクも頻発している。
このため、電子部品各社は、BCP(事業継続計画)対応を重視した生産体制や開発体制の再構築なども推し進めている。最近は原材料価格高騰も深刻なため、省材料技術や材料リサイクル、より高効率の生産ライン開発などにも力が注がれる。同時に、サプライチェーンの安定化に向け、素材相場や輸入材価格の高騰を踏まえた電子部品の価格改定も求められている。
最近の電子部品業界では、アライアンス戦略やオープンイノベーション戦略、M&A(企業の合併・買収)の取り組みも一段と活発化している。各社は外部リソースの活用により、事業のスピードアップや提案力の向上を追求し、新たな価値の創出を目指す。