2022.07.22 【家電流通総合特集】ヤマダホールディングス 山田昇代表取締役会長兼社長CEO大型新業態店舗「ライフセレクト」軸に出店・改装進める

山田昇代表取締役会長兼社長CEO

家電専門の「テックランド」への改装で、家電の品ぞろえを充実(テックランド横浜泉店)家電専門の「テックランド」への改装で、家電の品ぞろえを充実(テックランド横浜泉店)

「ライフセレクト」は全国各地で出店が進む(テックライフセレクト広島アルパーク店)「ライフセレクト」は全国各地で出店が進む(テックライフセレクト広島アルパーク店)

中期経営計画、デンキ事業の成長がカギ

商圏や地域特性考慮し〝面〟で展開

 当社は昨年11月に、2025年3月期で2兆円の売上高達成を目指す中期経営計画を策定した。柱であるデンキ事業では、家電だけでなく、家具やインテリア、生活雑貨、リフォームなど「暮らしまるごと」の提案が可能な大型新業態店「ライフセレクト」を軸に、出店や改装を全国各地で進めている。

 そうした中、4~6月は、売り上げ以上に店舗開発を重視してきた。出店や改装だけでなく、耐震補強工事や、節電を重視した店舗照明の全店LED化なども同時に進めている。そのため、コロナ禍で一時的に高まった巣ごもり需要の反動が市場でまだ残っていることも影響し、期待したほど売り上げは伸びなかった印象だ。

 今年の夏商戦についても、6月下旬の連日の猛暑でエアコンを中心に急激に需要は盛り上がったが、梅雨明けした7月上旬は少し市場の勢いがなくなってきた。ただ、暑くなれば市場は一気に活性化する。安定供給に不安のあった商品についてもしっかり確保できているため、これから挽回していく。

 中期経営計画では、デンキ事業の成長が計画達成の鍵を握る。住建事業や環境事業なども大事で成長性も高いが、それらもデンキ事業があるからこそ躍進できるというものだ。デンキ事業の中ではEC(電子商取引)やリフォーム、家具・インテリアの販売は大きく伸びている。これは出店・改装による店舗展開の加速と売り場面積の拡大がそれらを下支えする。店舗では電子棚札の導入や販売員へのタブレット支給など、接客力の向上につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)にも投資してきた。

 店舗への投資はまだ成果となって表れているとは言い難い。DX関連は、接客力の向上というだけでなく、店舗運営コストの低減にもつながる施策。これらの効果は、下期に入れば出てくると期待している。

 店舗展開では、ライフセレクトをはじめ、リアル店舗とネット通販との融合を目指す「YAMADAウェブ・ドット・コム」店や、リユース品やアウトレット品を扱う「アウトレット店」、既存の郊外型「テックランド」など、商圏や地域特性を考慮しながら〝面〟で進めている。多様化するニーズに合わせて利用する店舗を選べるようにしている。

市場にインパクト

 ライフセレクトの出店を始めてから1年が経過し、現在は24店となった。3000坪(約1万平方メートル)を超えるような大型店をこれだけ早く展開できているのも、当社が元々、全国各地に店舗を持っていたからだ。ゼロから新店を開発していては時間がいくらあっても足りない。ライフセレクトが今の倍となる50店程度に増えると、市場や業績へのインパクトがもっと大きくなってくるだろう。

 ライフセレクトでは、暮らしに関わるさまざまな商品を取り扱っている。その中でも力を入れているのがSPA(製造小売り)商品だ。

 SPA商品は、アマゾンの「Fire TV」搭載テレビやエアコン、電動ベッド、家具、インテリア、生活雑貨など、家電にとどまらず、幅広い商品群で展開している。当社がSPA商品に注力するのも、これからの家電量販店にとって、メーカーが作った商品を販売するだけでは生き残れないと思っているからだ。

 日本は人口減少の局面に入っているため、家電市場が今後シュリンクしていくという予測は以前からされていた。巣ごもり需要で一時的に市場は底上げされた形だが、長期的に見るとこの傾向は変わらないはずだ。そうした社会環境で当社をより選んでもらうためにも、自社で企画し、製造までも責任を持つSPA商品を充実させ、他社との差別化を図るとともに、収益基盤を安定的に確保していく必要があると考えている。

リユースやECをさらに強化

 資源循環型ビジネスの一環として取り組むアウトレット店も、事業は順調だ。5月には、群馬県藤岡市にリユース工場を立ち上げた。今後は山口県や東北地方でもリユース工場を建設し、年間30万台の家電リユース製品の生産体制を整える予定だ。

 ただ、物流体制の整備も同時に進めなければならない。リユース品は、店舗での回収から工場での再生、そして再び店舗に配送しなければならない。物流コストをいかに抑制するか。今、この改革に取り組んでいる。

 現在のリユース生産台数には対応できているが、30万台に拡大した際、物流がネックになってくるのは明らか。ドラム式洗濯乾燥機のような付加価値の高い商品が人気であるため、リユースでも使いたいという人は多く、市場の拡大には今後も期待できる。リユース品はしっかりと整備して販売しているため、新品のように長く使う人も少なくない。先を見据えて物流体制を整え、需要の拡大に応えていく。

 ECも、これからもっと強化していかなければならない。ECの拡大では、当社はリアル店舗との連携を戦略的に進めている。物流拠点としての役割も果たすのがYAMADAウェブ・ドット・コム店で、スマートフォンなどネットからの注文に対応できるよう、売れ筋商品など豊富な在庫をそろえている。

 ECは物流や関連するサービスにコストがかかる。当社の場合、全国に約1000店ある店舗網を生かし、ECにおける物流を効率化することを目指している。ECでは、YAMADAウェブ・ドット・コム店に限らず、ライフセレクトも大事な役割を担っている。家電以外の商材も発送可能な物流拠点としても活用するからで、ライフセレクトのような業態は、コロナ禍の変化を受けて、さらに注目を集めているのを感じている。

 中期経営計画で掲げた売上高2兆円という目標は、必ず達成するという気持ちで臨んでいる。「たのしい。くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」をコンセプトにするライフセレクト業態を実現するのに、10年という歳月をかけて改革を進めてきた。今年度は、これからその成果を刈り取っていかなければならない。

 そういう意味でも下期は、構造改革や店舗開発などこれまで先行投資してきた部分で、具体的な成果を上げる時期。市場が活性化してくれば、「暮らしまるごと」提案できる当社の強みがより発揮されるだろう。