2022.07.22 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<95>5GはVUCA時代を乗り切るビジネス基盤⑦
1995年は激動の年だった。
1月17日早朝に阪神・淡路大震災が起きた。その時、筆者はマレーシアのクアラルンプールにいた。夜ホテルに戻ってから、CNNニュースに流れる神戸市内の壊滅的映像で、それを知った。
3月20日、朝の通勤時に地下鉄サリン事件が起きた。筆者は現場の近くにいたのだが、それを知ったのは午後職場に戻った後だった。当時は携帯電話もメールができる2G(第2世代)になったばかりで、世帯普及率は10%だった。もちろんスマートフォンはない。端末を持ち歩く文化はまだなかった。
情報産業も激変の年だった。7月1日に、携帯電話が急速に普及する契機となるPHSサービスが開始された。アマゾン・ドットコムがサービスを始めたのも7月だった。さらに8月には、マイクロソフトがパソコン(PC)の爆発的な普及の原動力となるウインドウズ95を発売、日本語版は11月23日に発売された。
ビジネス基盤の礎
筆者がノートPCとPHSを購入したのも95年で、このVUCA時代を乗り切るビジネス基盤の礎となったと思っている。
当時はITによるビジネス変革に共鳴した有志が、電話とファクスしかない職場に個人のノートPCと携帯電話を持ち込んで試行錯誤していた。PHSデータ通信用PCカードでインターネットに接続し、メールで連携しながらパワーポイントの教育資料を作成していたことを思い出す。
2000年あたりから有線LANによるPCが一人一台導入され、〝トップダウン〟のITリテラシー教育が始まるわけだが、筆者はその前に〝ボトムアップ〟で、無線のITリテラシーを身に付けたわけだ。
さて、「ITリテラシー」の前から「情報リテラシー」という言葉があったのをご存じだろうか。
コロラド大学の図書館長のパトリシア・セン・ブレイビクと大学総長のE・ゴードン・ギー両氏による共書『情報を使う力』(1989年、勁草書房)によると、情報化社会で求められるのは「〝コンピューターを使いこなす〟だけの人間ではなく、〝情報を使いこなす〟ことのできる人間」といい、情報リテラシーについて説明している。
DXリテラシー
その中で、「情報リテラシーを身につけている人は、大量の情報に溺れることなく特定の問題を解決したり意思決定したりするために、どのようにして情報を見つけ、評価し、効果的に用いればよいのかを知っている」とし、「従来の受動的な教育では情報リテラシーは身につかない」と強調している。
つまり、情報リテラシーを身に付けるには、単にITを使いこなすだけのITリテラシーだけではダメだということだ。さらにVUCA時代の情報リテラシーは、大量の情報、すなわちビッグデータを使いこなせる5G基盤の下で、データを収集・分析してくれるIoTと人工知能(AI)を活用してビジネスを変革する「DXリテラシー」を加えなければならないだろう。それも〝ボトムアップ〟での推進が重要となることは、前回述べたとおりだ。
まずは、上位層をはじめとした現場の関係者が「DXリテラシー教育」を受け、現場の有志が試行錯誤して取り組むDX推進を批判したり、邪魔したりしないで、良き理解者として協力してあげることだ。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉