2022.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】 主要ソリューションプロバイダー各社にアンケート電波新聞社まとめ
電波新聞社はこのほど、主要ソリューションプロバイダー各社に2022年後半の市場、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み、海外展開、働き方改革についてアンケート調査を実施し、先の見通しを探った。アンケートは毎年、新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は22年8月15日から25日まで実施し、36社から有効回答を得た。
22年後半の受注見通し、半数以上が「増加」を予想
半導体不足を発端とした部材不足や原材料費の高騰、ウクライナ問題など市場環境に先行きの不透明さは残るものの、企業活動は活発になりつつあり、ICT(情報通信技術)関連市場は堅調に伸びてきている。特にデジタルを活用した変革については投資も旺盛で、後半戦に向けても市場環境は悪くなさそうだ。
アンケート結果によると、足元の受注見通しは6月までは6割以上が「増加」を選択しており、この先も半数以上が「増加」を予想している。年内は一部で減少を見込む動きもあるが、23年以降は「前年並み」か「増加」を予想している。
22年後半の業種別の受注見通しは、製造で増える見通しのところが多く、製造業のデジタル化やシステム刷新がさらに進んでいくとみられる。公共も4割が「増加」を選択しており、自治体のデジタル化などが着実に進んでいきそうだ。「増加」の見通しが最も少なかったのが通信業だが、「大幅増加」を選択した企業と「減少」を選択した企業が一定数あり、企業で見通しが割れた。
市場の見通しについては「緩やかに成長し続ける」との回答が7割以上と最も多く、市場は安定成長しているという見方が定着してきた。ただ一部でマイナス成長を予想する企業や「コロナの状況で変わる」とみる回答もあった。
新型コロナウイルスの影響については、良い方向で出ている企業が4割強で、前回調査から約1割減少した。逆に4割弱がマイナス方向に影響が出ており、引き続き二極化していることが明らかになった。影響がなかったところは前回の6%から15%まで増え、全体ではコロナの影響を抑えているようだ。
22年後半に伸びる分野は、前回調査から上位に変動はなく、「クラウド」「セキュリティー」「IoT」「人工知能(AI)」「5G関連」「RPA(ロボティックプロセスオートメーション)」の順になった。前回よりも回答が増えたのが「保守」と「マイナンバー対応」で、新設の「メタバース」も比較的期待が高かった。
22年後半の重点施策は、前回1位だった「セキュリティーの強化」が2位となり、クラウドの取り組みが1位に浮上した。昨年1位だった「働き方改革の取り組み」は3位になった。前回から増加したのが「5Gへの取り組み」「コスト削減」「マネジメントサービスの取り組み」など。「インダストリー4.0への対応」は大幅に減った。新設の「メタバースへの取り組み」の選択も一定数あるものの、時期尚早との見方も強そうだ。
今後取り組みたいサービスは「メタバース」が最多
DXの取り組みについては、提供している企業は92%(前回94%、前々回92%)となり、引き続き大半の企業が取り組んでいる。DX関連のサービスでは、前回同様「クラウド」が最も多く、「IoT」「AIを組み込んだシステムやサービス」も回答数が多かった。新設の「メタバースを使ったサービス」も6社が選択した。
DX関連の売り上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めているものの、一部で「伸びていない」との回答も見られた。
取り組み状況から見ると「AIを組み込んだシステムやサービス」で売り上げが伸びていない比率が高い。新設の「メタバース」は、取り組む企業の多くが売り上げを伸ばしていた。
現在取り組んでいないが今後取り組みたいサービスでは「メタバース」が最も多く、関心の高さがうかがえた。「AI」「ビッグデータ」「モバイル」を選択したところも引き続きあり、そのほかではブロックチェーンを挙げた企業もあった。
働き方改革の課題はコミュニケーションの改善
働き方改革については、全社が取り組みを進めていた。働き方改革の取り組み内容については、前回と同様の結果となり、「テレワーク」「人事制度の見直し」「AI、RPAの導入による作業の削減」の順だった。そのほかの回答では「育児社員の短時間勤務制度」「オフィス環境改善」「フレックスアドレス」などがあった。
働き方改革の効果については、97%が「出ている」(前回97%)と回答した。具体的な効果については、前回と変化なく「生産性が上がった」が最も多く「残業が減った」「社員満足度が上がった」が同率2位だった。そのほか「移動時間がなくなり時間が有効活用できている」「学びの文化が醸成された」「自律的な社員の増加」といった回答もあった。一方で、効果が出ていない企業からは「社員満足度が下がった」「生産性を高める施策が追い付かない」「残業抑制と収益向上のギャップがある」という声が挙がった。
働き方改革の課題については「コミュニケーションの改善」が最も多く、「業務管理の方法」「社員のモチベーション向上」と続いた。出社しなくなることでコミュニケーション不全が起こっているケースも見られるため、課題視している企業が目立った。
在宅勤務については大半の企業が「全社的に継続する」という回答だった。サテライトオフィスを増やすところ、出社と在宅を併用するところなどもあった。半面で制限を付けるところや、コロナ禍でのみの対応というところもあり、企業ごとに判断が分かれた。
今後期待できる地域は「北米」
グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が61%(前回74%)となり、撤退したところも6%あった。海外事業の多くは営業拠点の開設とオフショアで、両方を展開しているところもあるほか、先進技術の調査などで拠点を展開する企業もある。
海外売上高比率は、前回同様「0~3%」の企業が最も多く、45%(前回50%)だった。次に「3~5%未満」(25%)で、「30%以上」も15%あった。
海外売上高については「増えている」との回答が48%(前回36%)となり、海外展開している企業の半数近くが売り上げを伸ばしている。一方、「減っている」との回答は9%で前回の4%よりも増えた。増えている企業はサービスの拡大や顧客需要の拡大などがあった。逆に減った企業はコロナの影響などを挙げていた。
海外事業の今後については、62%が「増やす」と回答した。海外展開をしていない企業については、引き続き展開する予定のない企業、未定とした企業がそれぞれ半数ずつあったが、一部で海外進出を予定している回答もみられた。
今後期待できる地域については「北米」が再び単独1位になった。前回同率1位だった「ベトナム」は2位だった。前回大幅に増えた「タイ」は再び減少。「インド」「西欧」が前回よりも回答が増えた。
アンケート回答企業一覧
▽伊藤忠テクノソリューションズ▽インターコム▽内田洋行▽NEC▽NECソリューションイノベータ▽NECネクサソリューション▽NECネッツエスアイ▽NECフィールディング▽NSW▽SCSK▽大塚商会▽コア▽シーイーシー▽電通国際情報サービス▽東芝デジタルソリューションズ▽東芝情報システム▽日本事務器▽ビジネスエンジニアリング▽日立製作所▽日立システムズ▽日立情報通信エンジニアリング▽日立ソリューションズ▽日立ソリューションズ・クリエイト▽富士通▽富士通エフサス▽富士通コミュニケーションサービス▽三菱電機インフォメーションシステムズ▽ユニリタ、ほか8社(計36社)