2022.09.02 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<100> アジャイルによるDX推進者の早期戦力化②
1990年代、密な対話によって変化に適応し、チーム一丸となってソフトウエア開発を進めるためのフレームワーク「スクラム」が登場した。
スクラムの生みの親である一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と、スクラムをソフト開発に応用したジェフ・サザーランド氏(スクラム社CEO)は、スクラムについて「絶えず不安定で、自己組織化し、全員が〝多能工〟である」と語ったという。
その後、「アジャイル(Agile)」として広く知られるようになったのは、2001年に「アジャイルソフトウエア開発宣言」が出されてからだ。日本では05年ごろからアジャイル開発の取り組みが始まり、徐々にITサービス開発などで採用されるようになった。
このようにソフト開発部門に限られていたアジャイルだったが、VUCA時代のビジネス変革のニーズが一段と高まるにつれて、ビジネス部門の中にもアジャイル手法を採用して、ビジネス環境の激しい変化に迅速に対応できる組織へと変革しようとする動きが見られるようになった。
そこで先進的なL&D(Learning&Development)とも呼ばれる人材開発部門が〝アジャイル学習〟を始めた。この学習手法は、アジャイルなチームを訓練するプロセスを指す。
一方で〝ラーニングアジリティー(学習の俊敏性)〟という言葉がある。これはチームの個々が持つべき能力を指しており、不慣れな状況に適応して柔軟かつ迅速に学習する、自己管理された能力のことをいう。
この能力の高い人は不確実性の耐性があり、技術と課題を素早く結びつけて理解し、解決策を見つけることができるといわれている。
九つの側面
コロンビア大学のW・ウォーナー・バーク博士は、ラーニングアジリティーの特性を、①柔軟性②スピード③試行④成果のリスクテイク⑤対人関係のリスクテイク⑥コラボレーション⑦情報収集⑧フィードバック⑨振り返り--の九つの側面に分類している。
①柔軟性は、新しいアイデアを受け入れ、新しいソリューションを提案すること。
②スピードは、うまく機能しないアイデアは破棄し、可能性のあるアイデアを加速すること。
③試行は、何が効果的か判断するために、アイデアやアプローチを試すこと。
④成果のリスクテイクは、(失敗を恐れず)挑戦の機会が与えられる新しい活動を探すこと。
⑤対人関係のリスクテイクは、(対立を恐れず)人との相違点について話し合い、間違いを認め学習すること。
⑥コラボレーションは、ユニークな学習機会をもたらす人との協働を考えること。
⑦情報収集は、さまざまな方法で自分の専門分野の最新情報を維持すること。
⑧フィードバックは、自分のアイデアや成果について、ほかにフィードバックを求めること。
⑨振り返りは、いったん立ち止まり、自分の成果について評価すること。
多能工として機能
つまり、これらの特性をうまく利用すれば、チームが〝多能工〟として機能するわけだ。
DX推進者の早期戦力化もしかり。ワイヤレスIoTやローカル5G、データサイエンス、人工知能(AI)といったマルチな技術を活用して課題を解決するDX推進チームは〝多能工〟にほかならない。次回、その具体例を挙げてみたい。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉