2022.09.06 【スイッチ特集】次世代ニーズ対応のR&D強化
照光式押ボタンスイッチ
スイッチメーカー各社は、市場ニーズや顧客ニーズに対応した新製品開発や製品バラエティー拡充に力を入れている。各社は、自動車や情報通信機器、産業機器/インフラ関連などの成長分野に向け、小型・高品質で操作性や信頼性に優れた製品開発を推進する。スイッチのグローバル需要は、車載や産機向けがけん引し、2021年は高い成長を遂げ、22年も堅調に推移している。各社は今年後半から23年に向け、次世代ニーズに対応したR&Dを強化するとともに、供給責任を果たすための生産体制整備を推進する。
スイッチは、ヒューマン・マシン・インターフェイスとマシン・マシン・インターフェイスをつかさどる電子部品として、民生用から産業用、自動車、各種インフラなどあらゆる工業製品で使用される。
スイッチのグローバル需要は、世界的な機器需要増大などを背景に、13年から17年にかけて順調に推移した。18年後半から19年は、米中通商摩擦激化や中国経済減速の影響によりスイッチ需要も軟調に推移し、20年前半は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響で需要が急減したが、20年後半からは回復基調となり、21年、22年と堅調な推移が続いている。
電子情報技術産業協会(JEITA)のスイッチグローバル出荷統計では、21年は2月から8月まで7カ月連続で前年同月比プラスで推移。21年9月以降は前年同月をやや下回る水準で推移したが、22年の年明け後は再び増加基調の推移となっている。
最近のスイッチ市場の成長を支えているのは旺盛な設備投資需要や、CASEをメガトレンドとする自動車の高機能化、各種インフラ投資の増大など。最近の市場では半導体不足の長期化が機器生産に影響しているが、ユーザーのBCP(事業継続計画)在庫積み増しもあり、部品受注は高水準が続いている。
旺盛な需要を背景に、一部のスイッチで品不足も指摘され、スイッチメーカー各社は受注拡大や高水準の受注残に対処するため、自動機増設などを進めることで、供給確保に全力を挙げる。
22年後半から23年に向けても、旺盛な半導体製造装置需要や世界的な自動車生産回復、ポストコロナ時代を見据えた自動化ニーズの高まりなどが、付加価値の高いスイッチ需要を押し上げていくことが期待されている。
自動車では、安全・快適・環境などをキーワードとする車の高機能化が新たなスイッチ需要を生み出していくことが予想されている。ICT関係では、日系スイッチメーカーがグローバルで高シェアを持つ携帯端末用などでの成長が見込まれる。このほか、ロボット、5G基地局、医療機器/ヘルスケア、セキュリティー機器市場の拡大、さらにIoT関連市場の広がりが新たなスイッチ需要を創出していくことが期待されている。
最近の電子機器・製造装置などの分野では、従来のメカニカルスイッチからタッチパネルへの置き換えの動きも一部でみられるが、確実な操作確認が可能で信頼性に優れるメカ式スイッチには根強い需要がある。今後も自動車や産業機器などの技術進化に伴い、スイッチへの技術要求はより高度化することが予想される。
同時に、スイッチで培ってきた技術を活用し、タッチパネル市場に参入するスイッチメーカーも多い。さらに、最近はコロナ禍での非接触要求を踏まえ、タッチレスでの操作が可能な非接触タイプのスイッチ開発に乗り出すメーカーもみられている。スイッチ技術を応用したカスタムモジュール、システムなどを手掛けるスイッチメーカーもある。
製品別動向
携帯端末用スイッチ
携帯端末用スイッチ開発では、小型・薄型化と高強度・高信頼性・長寿命などの技術要件を同時に満足させることが必要。最近のスマートフォンでは、防水機能の重要度も高まっている。民生用スイッチメーカー各社は、こうした要求に応えるため、シミュレーション技術や材料技術などを駆使した高度なR&Dを展開する。
スマホなどの携帯端末1台当たりのスイッチ使用数量は、タッチパネルシフトにより減少傾向だが、米アップルのアイフォーンなどの高級機では小型スライドスイッチなどへの根強い需要がある。ウエアラブル端末需要の拡大やIoT関連需要の広がりも民生用の超小型高性能スイッチの需要を創出するものとして期待されている。
車載用スイッチ
自動車には、多くの操作/検出系スイッチが搭載されている。コックピットのフロントパネル周りのほか、ハンドル周りやドアモジュール部にもスイッチが多用され、ボンネットやトランクの開閉検知、車室内照明操作などにも使用される。特に検出系スイッチは、車室内機能の多様化に伴い、車1台当たりの搭載数量が年々増加する傾向にある。
車載用スイッチへの技術要求は、小型軽量かつ高信頼性に加え、防水防じん、耐振動/衝撃性、長寿命、耐環境性(耐高温/低温)、良好な操作感触、静音化など多彩。特に高級車に搭載される操作系スイッチには、良好な操作フィーリングや高級感のある操作音が要求され、スイッチメーカーでは、長年培ってきたノウハウをベースに、顧客との擦り合わせを通じた最適なデバイス開発に努めている。
安全性向上のため、運転車が前方から目を離さず操作できるスイッチ開発や、振動などのフィードバック機能付きデバイス開発も進んでいる。安全運転を考慮したスイッチの取り付け場所の選定なども重視される。車の電子化が進展する中で、冗長性を確保するために2回路/3回路/4回路の検出スイッチなども開発されている。
産業機器/インフラ用スイッチ
産業用スイッチ各社は、産業機器・装置の高機能・高性能化や作業性・安全性向上などを追求した製品開発に力を入れている。
産業用スイッチの用途は、FA機器やロボットをはじめ、工作機械、半導体製造装置、通信・放送用設備、電力機器、建設機械、農業機械、航空宇宙関連など多彩。
産業機器/システムでは、誤作動のない正確な動作が必須となるため、スイッチにも高い信頼性が求められる。このため、産業用スイッチ各社は、堅ろう性や長期信頼性、耐環境性、優れた防じん防水性能を備えた新製品開発や製品バラエティー拡充に力を注いでいる。