2023.01.11 電子部品物流市場の展望・戦略 アルプス物流 臼居賢社長に聞く ASEANやインドなどエリア拡大「経済効果+環境対応」強みに

臼居 社長

 電子部品物流企業、アルプス物流の臼居賢社長に電子部品物流市場の展望や同社の戦略を聞いた。

―最近の事業動向は。

 臼居社長 短期的には電子部品物流部門の貨物量はやや減少傾向。特に2022年の夏ごろから、PCやスマートフォンなどの民生系部品の物量が減少している。自動車向けは、22年は半導体不足や中国ロックダウンの影響を受けたが、やや回復してきている。業界のサプライチェーンが乱れる中でユーザーがBCP在庫を増やしたが、現在は不足している部品とそうでない部品とでバランスが両極端になり、部品によっては相当な在庫が積み上がっている。

 現在も半導体不足は解消されていないが、加えて、最近は高インフレにより消費が落ちてきたという声も多い。自動車市場では直近でも完成車在庫が少ないため、半導体不足が解消されれば生産は増えるが、その先は不透明。いずれにしても今年は22年より厳しい年になるとみている。

 一方、世界全体の貨物量が減少してきたことで、高騰が続いた海上輸送や航空輸送はスペースの需給が緩和され、スポット価格が下がってきた。

―23年度に向けた事業戦略は。

 臼居社長 23年度は、現中期経営計画(3カ年)の2年目。重視するのは顧客の層を増やしていくこと。コアである電子部品メーカーや電機メーカー、部品商社に加えて、自動車関連や産業機器関連のマーケットで顧客を開拓していく。エリア別では、西日本にエリアを拡充し、海外もエリアを拡大していく。「エリア×マーケット」で面積を広げていきたい。

 エリア拡充で注力するのは、ASEANとインド。ASEANでは、現在は駐在事務所のみのフィリピンと、拠点のないインドネシアの2カ国で新拠点を開設したいと考えており、23年にはその可否を判断する。インドは現在、2エリアに計三つの倉庫を持つが、さらにネットワークを拡充していく。

 日本では昨年に横浜に新倉庫が完成し、23年には名古屋新倉庫(愛知県小牧市)を建築する。海外では22年に韓国と中国で、倉庫面積をトータル約1万4300平方メートル増床した。今年はベトナム、タイ、マレーシアなどで倉庫のキャパシティーを上げていく。

 当社は電子部品物流のプラットフォーム「共同保有+共同集配」を有しており、国内約1900社にサービスを提供している。このプラットフォームではこれまで「コスト効率向上」が最大の訴求ポイントだったが、実際には「CO₂削減効果」もある。これを再度整理し、「経済効果+環境対応」を強みにPRしていきたい。

―サービスメニュー拡充の取り組みは。

 臼居社長 当社の電子部品物流事業は、電子部品の販売物流とセットメーカーの調達物流に大別されるが、特に調達物流のメニューを増やしている。「ⅤMI(ベンダーマネジメントインベントリー)」と「BMI(バイヤーマネジメントインベントリー)」をまとめてキッティングして納入する調達物流に、検査工程を追加したり、顧客の工場だけでなく製造ラインまで届けるサービス(構内物流)なども提供したり、一部、調達代行業務なども行っている。電池を含む危険物取り扱いや鉄道を活用した環境対応メニューなども増強している。