NECは3日、物流倉庫や工場での作業内容やレイアウトの変化に対応できるロボット制御AI（人工知能）を開発したと発表した。AIが人間のような想像力を学習していく「世界モデル」をロボット制御に応用。これまでは、人間ならすぐにできる単純作業でも事前学習に数カ月を要していたが、ロボットが自律的に実世界の構造や常識を理解して将来を想像しながら行動する世界初の技術という。今後、倉庫や工場の現場で検証を進め、2024年度中の実用化を目指す。人手に頼らざるを得なかった現場にロボット導入を進める技術として期待を集めそうだ。

　開発した技術は「世界モデル」をロボット制御に応用することで、機械学習したものと違うサイズや形状の物品が、不規則に置かれている場合でも、ロボットが的確につかんで所定の位置と向きに正しく置くことができる。

　NECデータサイエンス研究所の酒井淳嗣所長は「事前学習の時間を大幅に短縮し、扱う物品や作業レイアウトなどの環境の変化に柔軟に対応が可能」と説明する。

　鍵となるのが、現実空間と同じ世界を仮想空間に双子のように再現する「デジタルツイン」のシミュレーション技術だ。乱雑に置かれたさまざまな種類の物品を箱に整列して詰めるハンドリング作業をロボットが行うには、物品の種類や置き方、箱の中の状態など作業条件に応じて物品をつかみ、指定された場所に置くといった動き(タスク)を生成する必要がある。これまでは作業条件によっては不適切な動作候補が生成されることがあり、作業成功率や約70％にとどまっていた。

　世界モデルによって実行に移す直前に動作の成否を予測し、成功率の高い動作候補を算出・実行。デジタルツイン上でこうしたシミュレーションを行うことで、約95%の作業成功率を達成し、現場で活用可能なレベルであることが確認された。

　（6日付の電波新聞／電波新聞デジタルで詳報します）