2024.01.12 【放送/機器総合特集】放送機器各社 24年の戦略 池上通信機 田部伸一営業・マーケティング本部副本部長
田部 副本部長
FPUラインアップ・映像システム販売を強化
昨年は地方の放送局のサブシステムの設備更新により受注は堅調に進んだ。放送用カメラもラインアップがそろっており、海外を中心に順調な伸びを見せた。
無線中継伝送装置のFPUは更新需要が高まってきており、今後も伸びが期待できる。一方で、まだ半導体などの不足による部材調達の長納期化の懸念も残っている。
近年は放送業界でも人手不足が顕著になっている。当社は昨年も省人化、省力化、業務効率化をキーワードに展開してきた。
映像制作現場の新しいワークスタイルとして、ロボットアームを用いたリモートプロダクションソリューション「R2 SYSTEM」を提案している。ロボットならではの正確な高速移動・ダイナミックなカメラワークと高度な再現性や、直感的でシンプルな操作で容易に撮影できることから評判が良い。特にCM撮影や24時間放送するテレビショッピング市場などで注目されている。
昨年はバーチャルシステムとの融合で、R2カメラとトラッキングシステムカメラの2台での同時収録を可能にしたインカメラVFXのバーチャルプロダクションを提案した。R2 SYSTEMからカメラの位置情報などをFreeDプロトコルで送出し、3DCGとリアルタイムに連動する。特別なセンサー配置やトラッキングシステムは不要で、運用が容易だ。
さらなる普及に向けて、R2をゲーム用コントローラーからも操作可能とし、名古屋のイベントで紹介したところ、特に若い世代から高い関心を集めた。これまでのレンタルサービスだけでなく、常設用の導入に向けて積極的に推進していく。
また、将来を見据えて、AI(人工知能)機能を取り入れた実験を行っている。今後さらなる機能拡張でさまざまな分野での活用が期待される。
放送システム機器のIP化にも積極的に取り組んでいる。SDIとIPのハイブリッド化を実現するSDI/IP変換ゲートウェイ「IMR-200」を展開しており、IPスイッチャーや各IP機器の統合制御などを行うソフトウエア装置も開発している。
放送カメラシステムでは、グローバルシャッター対応CMOSセンサーを採用した、4KアップグレーダブルHDカメラシステム「UHK-X600/650」や4K/HDカメラシステム「UHK-X700/750」など、顧客のニーズに応える製品開発を強化してきた。
24年度も引き続き、スタジオ収録をはじめスポーツ中継、ライブイベントなど幅広い制作現場での運用が期待できる。
ヘリコプターからの空撮に使用する防振システムを備えたヘリカメシステムの更新需要にも期待している。ヘリコプター用カメラ防振装置「SHOTOVER M1」に加え、高周波部と制御部を一体型にしたFPU装置は官公庁を中心に堅調だ。昨年初めて、放送局からも受注した。
今後、ヘリコプターの更新時期に合わせて、カメラ装置とともに、放送局に伝送するFPU装置伝送とオールインワンで提案し、放送市場にも積極的に展開していきたい。
24年度はFPUのラインアップ強化として、固定基地局の無線装置「TSL」の更新需要に合わせて新製品を投入する計画だ。
また、新たな取り組みとして、映像システムの販売チャンネルの強化を図る。これまではスイッチャーや映像分配器、映像変換器などの映像システム周辺機器をシステムとして販売していたが、こうしたシステム販売に加えて、機器単体販売とOEM供給も展開していく。