2024.05.17 【やさしい業界知識】直動案内機器
直動案内機器の一例
位置を決める機構に利用
電子部品実装や工作機械など
直動案内機器は、機械要素部品(生産設備やさまざまな機械装置に使われる金属部品の総称)の一つ。レール面の溝にボール(またはローラー)をかみ合わせることにより、摩擦によるエネルギー損失を軽減し、滑らかな直線運動を行う。「LM(リニアモーション)ガイド」とも呼ばれる。
直動案内機器が直線運動を行う機械要素部品であるのに対し、回転運動を行う機械要素部品は軸受(ベアリング)と呼ばれ、同じく摩擦によって生じるエネルギー損失を軽減する。直動案内機器と軸受の両方を生産している企業がほとんどを占める。
直動案内機器はモーターを組み合わせて、さまざまな機械の位置決め機構として使われる。半導体製造装置、電子部品実装機、工作機械、生産ライン搬送装置など生産設備のほか、医療機器、鉄道車両、アミューズメント機器、航空宇宙、鉄道、自動車といった幅広い分野で利用されている。
例えば家電製品や電子機器に用いられるプリント基板に半導体や電子部品を搭載する電子部品実装機では、部品を正確に搭載するため直動案内機器にモーターを組み合わせ、前後(X軸)、左右(Y軸)、上下(Z軸)に移動させて位置を決める機構に用いる。
超精密加工が必要
直動案内機器には、高剛性、高精度、長寿命、高防じん、静音などの技術要素が必要となる。例えば、直線運動をする際に金属の加工面が完全に平坦でないとウエービング現象が起き、装置の精度に誤差を与える。そのため超精密加工が要求され、日本メーカーは精密な金属加工技術を得意とすることから、世界で強みを発揮している。レール幅が1ミリメートルという超小型タイプも製品化されている。
直動案内機器業界では「CMS(コンディション・モニタリング・システム)」と呼ばれる故障予知システムが注目され、直動案内機器各社は新たな事業として展開を始めている。
ラインの停止防ぐ
直動案内機器は生産設備に組み込んで使うことが多い。直動案内機器にセンサーを取り付けて振動などの状態を常時監視し、センサーからの異常データを検知することで、その装置の故障の前兆を知ることができる。故障を事前に感知し、事前に部品交換などしておくと「チョコ停」や「ドカ停」といった製造コストに関わる製造ラインの突然の停止を防ぐことができる。
工場内の数多い生産設備にセンサーを組み込んでおくと、定期的な保守の時も1カ所で製造装置の点検ができる。また、センサーからのデータをクラウド経由で監視し、海外工場など遠隔地の生産ラインで稼働する製造装置の故障を予知して、日本から事前の対策を講じる指示も可能になる。(毎週金曜日掲載)