2025.01.20 次のユニコーン企業? 注目のディープテック企業

43社のスタートアップ企業が参加し、熱気に包まれる会場

会場では熱心な商談が行われた会場では熱心な商談が行われた

Caporus TechnologiesのオコナーCEO(右)とカール・M・トレイナーCCOCaporus TechnologiesのオコナーCEO(右)とカール・M・トレイナーCCO

Caporus Technologiesの誘電体フィルムCaporus Technologiesの誘電体フィルム

TerecircuitsのリッカードCEOTerecircuitsのリッカードCEO

 最近、新聞やテレビでよく見聞きするようになった「ディープテック」という言葉。これは、世界が抱える社会課題を解決するような科学的な発見や革新的な技術のことを指す。特定の技術領域を示すものではないが、AI(人工知能)やバイオテクノロジー、ロボティクス、量子コンピューター、新素材などが挙げられる。2010年代初頭には投資家の間で使われていた言葉で、決して新しい用語ではないが、近年多くのスタートアップ企業が取り組む開発テーマと重なる分野も多く、投資対象として注目が高まっている。

 米Plug&Play(プラグアンドプレイ)は世界トップクラスのアクセラレーター・ベンチャーキャピタル。先進技術を有するスタートアップ企業と各業界のリーディング企業、大学や行政機関、投資家をつなぎ、世界中のイノベーションを加速させてきた。シリコンバレーに本社を構え、世界60以上に拠点を展開。コンソーシアム型のアクセラレータープログラムが特徴で、ディープテック関連のスタートアップ企業を数多く支援している。

商談会でもディープテックは注目

 同社は16日、東京都内にてピッチイベントおよび商談会「Startup Showcase(スタートアップショーケース)」を開催した。今回は企業や金融機関、投資家などを中心に完全招待制で開催。来場者は、同社が厳選した43社と個別面談を行い、各社の最新技術や協業の可能性などについて話し合った。

 同イベントにおいてもディープテックは大きなテーマの一つ。国内外の複数企業が参加し、独自の技術を紹介した。

高耐熱、大電流対応の誘電体フィルム

 米Caporus Technologiesは、セラミックス積層技術を活用した誘電体フィルムやキャパシターを開発する企業。電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなど各種アプリケーションで大電流化が進む中、従来のポリマーフィルムコンデンサーや積層セラミックコンデンサーでは対応できなかった高温特性やエネルギー密度の課題を克服し、代替提案を図る。

 ケビン・A・オコナー創業者兼CEOは「独自技術であるナノレベルの細孔構造を実現する積層技術が、薄型でありながら耐熱性と静電容量、大電流対応を実現している。日米中で特許も取得した技術だ。当社はフィルムに塗布するスラリーを提供し、ロール状のフィルムやモジュールに展開できるパートナーを探している。ライセンス供与も考えており、コンデンサーメーカーや電源モジュールメーカーとの協業も視野に入れる」と話す。

半導体後工程のダイ実装に新工法提案

 米Terecircuitsは半導体や電子機器の製造工程に活用可能な感光性ポリマーを開発・製造している。同社の感光性ポリマーは光に反応し熱を持つことで、ポリマーは膨張ガスに変わる特性を持つ。この特性を利用して半導体の製造工程におけるパッケージ基板へのダイ実装に活用を提案している。ダイを貼りつけた感光性ポリマーをパッケージ基板の上に配置し、レーザーを照射することで膨張ガスが噴出し、パッケージ基板にダイが実装される仕組み。近年、後工程で加工された半導体のダイは超小型化・薄型化しており、従来のピックアンドプレースではダイへのダメージが懸念されるなど課題が増えている。

 創業者のウェイン・リッカードCEOは「当社の提案するプロセスであれば、非接触かつ実装速度も速く、生産性は向上する。既に複数のデバイスメーカーが実証実験を行っているほか、レーザー照射装置メーカーとの共同開発も進めている。現在は感光性ポリマーフィルムのみを提供しているが、次のステップとしてツール開発も考えたい。スケールアップを図るため、パートナーを探している」と話す。

 ディープテックは一般的に開発、量産、拡販に時間がかかるケースが多く、投資回収に時間を要すると言われている。その一方、商品化が成功した場合には社会的なインパクトが大きいため、中長期的な戦略を持って投資を行う企業が増えている。半導体やAIに関わるディープテック企業は多く、技術革新が進む半導体分野では急成長を遂げる企業が生まれる可能性は高い。