2025.01.21 気持ちいい「AIマッサージチェア」に殺到する人々 「ヘルスケアテック」が注目されるワケ
シンガポールの「オシム」のマッサージソファを体験する女性たち
世界各国のテクノロジー企業が先端技術をアピールした「CES 2025」。米ラスベガスの出展会場では、意外なコーナーに行列ができていた。ヘルスケアテックのエリアに並ぶ「マッサージチェア」を体験しようとする人々だ。
AIを搭載したマッサージチェアも登場
日本のフジ医療器、米国のダイワ、韓国のボディフレンド、中国のアイレスト、シンガポールのオシムといった企業が最新のマッサージチェアを並べて、性能を競っていた。なかには、AI(人工知能)によって利用者の体を記憶し学習する機能を誇っているものもある。
日本の代表的なマッサージチェアメーカーであるフジ医療器は「1954年に世界で初めて自動マッサージチェアを開発した」とその歴史を紹介しながら、もみ具合をAIで制御する最新機種をアピールしていた。
一方、ロボットのような奇抜なデザインで注目を集めていたのが、韓国のボディフレンド。腕や脚の部分が上下に動くマッサージチェアが、来場者の関心を呼んだ。その様子を撮影した体験動画が、YouTubeやXに数多くアップされている。
なかには、マッサージチェアの市場にこれから進出しようという新興企業もある。中国・浙江省に拠点を置くジーロンはその一つ。脚をマッサージする機能で特許を持っていて、他の企業よりも2割安く販売できるという。
担当者に「日本でも販売するのか」と質問すると、「日本のマッサージチェアは品質が良いので、我々は中国のほか、ヨーロッパやアメリカ、ベトナムなどで販売することを考えている」という回答だった。
人々に「癒やし」を与えるヘルスケアテック
マッサージチェアの市場規模は拡大している。調査会社によって数字が異なるが、成長市場という点では共通する。
フォーチュン・ビジネス・インサイツの調査によると、マッサージチェアやフットマッサージャーなどのマッサージ機器の世界全体の市場規模は、2024年に252億ドル(約3.8兆円)だったのが、32年には412億ドル(約6.2兆円)に拡大すると予測されている。
その要因として、個人の健康意識の高まりと、センサーやAIを搭載したマッサージチェアの登場があげられる。CESの会場に、多種多様なマッサージチェアが並び、そこに数多くの人々が集まったのも、ヘルスケアテックへの関心の高さを示すものといえるだろう。
ちなみに、記者がマッサージチェアを取材したのは、CESの最終日。広大な会場を歩き回り、疲れ果てた来場者たちが「癒やし」を求めたという側面もあったようだ。その一人として、記者もAI搭載のマッサージチェアに座ってみたが、極上の体験だった。