2025.03.15 【ひと】90以上のスマートホーム機器と暮らす ライフテックコーディネーター・織田未来さん(上)

スマートホームについて楽しそうに話す織田さん

90以上のデバイスを設置する織田さん宅。デバイスをプロットするとかなりの面積が塗りつぶされてしまう(織田さん提供)90以上のデバイスを設置する織田さん宅。デバイスをプロットするとかなりの面積が塗りつぶされてしまう(織田さん提供)

 「日記はもう30年以上続けていますね。紙の時代から始めて、今は『Notion』に落ち着いています」。そう語るのは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援などを行うプレイドに勤める織田未来さんだ。

 織田さんは、プレイドで働くかたわら、「ライフテックコーディネーター」を名乗り、デジタル技術を活用して日々の生活を便利に、豊かにする活動を行っている。その最大の関心事はスマートホーム。

 「ライフログを取るのが趣味で、その延長で始めました」と話すものの、自宅には90以上のスマートホーム関連機器が所狭しと設置されている。スマートホームのコンサルを専門にするX-HEMISTRY(ケミストリー、東京都豊島区)の新貝文将CEO(最高経営責任者)も「とんでもない量」と太鼓判を押すほどのスマートホーム好きだ。

データの楽しさを知る

 2003年にアップル日本法人に入社し、社会人生活をスタートした織田さん。08年には楽天に転職し、ユーザー行動といったデータの分析や予測などの楽しさに触れる。そんな中、出産を機に子育てに追われ、「家の機器を声で操作できたらタスクが減るなぁ」と考えたのが、スマートホームに取り組むきっかけになった。

 初めにスマート化したのはスイッチ関係。iPhoneからエアコンの電源を音声でオン/オフできるようにしようと、ネット情報を調べまくって自身で実現。スマートスピーカーが日本に本格上陸する前の話で、スマート化する手間やコストも馬鹿にならない。

 「手間はノーカウントなんですよね。なぞなぞを解いている感じです」(織田さん)。最先端のスマートホーム技術に触れようと、米国ラスベガスで毎年開催される世界最大級のテクノロジー見本市「CES」には昨年と今年、2年連続「自腹」で参加するほどの入れ込みようだ。

リアルタイムデータの価値

 現在務めるプレイドに転職したのは21年末。きっかけは、サイトやアプリの来訪者をリアルタイムに解析・可視化するプレイドの「KARTE(カルテ)」を業務で利用したことだ。「カルテは『今』を捉えるのがすごくよくできていると思いました。リアルタイムのデータがこんなに面白いというのを知り、スマートホームにも生かせるのではないかと考えました」(織田さん)。

 日本で進まないスマートホームの普及を後押ししたい――。90もの関連機器を自宅で使うのも、関心を持つ人にユーザー目線の情報を提供し、その良さや楽しさ、便利さを体験してもらいたいからだ。

 そんな織田さんが掲げるスマートホームのコンセプトは「家と仲良くしたい」。センサーやスピーカー、スイッチなど家と対話する入り口にある機器を使い、「家に五感を持ってもらう」(織田さん)イメージだ。

 技術の進化で、仮にスマートホームという言葉自体が消えてしまったとしても、テクノロジーで生活を豊かにしたいという思いは変わらない。そうした思いを表現するために、これまで書きだめてきた文章などをAI(人工知能)に読み込ませ、キャッチボールする中で導き出したのが「ライフテックコーディネーター」だった。

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 「ライフテックコーディネーター」を名乗り、コンテンツを投稿できる「note」で情報を発信しながら、「推し活」であるスマートホームに向き合う織田さんの姿を2回に分けて紹介します。