2025.03.10 宇宙港を高知県に 「スペースポート高知」が壮大な挑戦
右から古谷代表理事、小松共同発起人、今井客員教授
宇宙と地球を結ぶロケットや輸送機の離着陸場を高知県に――。そんな宇宙港(スペースポート)の開港を目指す一般社団法人スペースポート高知(高知市)が2月に設立された。関連産業を集積する一助も担い、県の活性化を後押しする。同団体の発起人で代表理事を務める古谷文平氏と共同発起人の小松聖児氏、さらに活動を支援する高知工業高等専門学校の今井一雅客員教授に、同団体にかける思いを聞いた。
―発足に至る経緯を聞かせてください
古谷代表理事 高知県の人口減少を問題視していた。どうすれば人を魅了して引き付けることができる都市になるかを考えたとき、スペースポートを高知県に作ることが有効というビジョンに行き着いた。
小松共同発起人 古谷氏がSNSで発信しているのを見て声をかけた。運営面は古谷代表理事、技術面が私という分担で力を合わせることで、100%実現できると考えた。
―今井客員教授は事業について聞かれた際にどう感じましたか
今井客員教授 出会った二人が描くビジョンに大賛成した。高専で人工衛星のプロジェクトに携わっているが、打ち上げの機会が少ないと感じている。スペースポート高知ができれば、衛星を打ち上げる機会も増える。さまざまな企業が参画し、衛星開発に取り組んでいくこともできる。高知県の宇宙産業が元気付くと期待している。
―既に日本にもスペースポートが見られますが、スペースポート高知の強みはなんでしょうか
小松共同発起人 アクセスに強みがある。他のスペースポートには、アクセスの面で弱点を抱えているところもある。スペースポートに最適な国内有数のロケーションと言える高知市沿岸は高速道路や大型港、空港に近く、物資の輸送にも便利な土地だ。
古谷代表理事 四国のアジアへのアクセスの良さを利用できることも強みの一つ。また、宇宙業界の人と話し課題と感じるのは、へき地や離島にある発射場では快適さを犠牲にしてしまっていることだ。宿泊施設やイベント会場、娯楽施設が集まる高知市近郊にスペースポートができれば、その地に長期滞在する人にも快適に過ごしてもらえる。
―南海トラフ巨大地震を懸念する声も上がっています
古谷代表理事 南海トラフ巨大地震が起きるリスクが懸念される中、不安に思う人が多い。とはいえスペースポートを作ることをやめるのではなく、防災や減災に役立つ施設としても生かしたい。これまでも地元の人や行政関係者が、南海トラフ巨大地震に備えてどう社会を持続させていくかについて考えてきた。(こうしたリスクに向き合い)未来を変える原動力になりたい。
―一人ずつ展望を聞かせてください
小松共同発起人 短期的には会員との勉強会や会議を通して、しっかりとした提言を高知県に対して行いたい。中期的には、29年度に小型ロケットの第1号を打ち上げられるようにまい進していく。
古谷代表理事 悲観的な状況に陥っている高知県にいるからこそ、未来に対して楽観的でありたい。プロジェクトのタイムライン(年表)はよく「チャレンジング」と言われるが、過度に楽観視しているわけではない。速度が増す産業の進化や変化のスピードに乗れば実現できるはずだと考えている。未来をポジティブに見据え、粛々とタイムラインに沿った活動を進めていく。
今井客員教授 スピード感を持ちながら、「オール高知」で活動の基盤を構築し、県外や世界中のさまざまな人とも連携し新しいことに挑む一つのモデルが作れる可能性があると見ている。