2025.03.16 【ひと】「妖精」頑張るスマートホーム ライフテックコーディネーター・織田未来さん(下)

「マター」への期待を話す織田さん

 スマートフォンのロック画面を解くと、スマートホーム関連のアプリだらけ。メーカーをまたいだ接続ができないため、機器の数だけアプリも増えていく。そんな状況を何とかしたい――。

 「スマートホームが普及するターニングポイントになる印象を受けました」。スマートホームの通信規格「Matter(マター)」の存在を知った時、織田未来さんが感じた率直な印象だ。

 スマートホームを「推し活」と公言し、テクノロジーで暮らしを豊かにすることを目指す「ライフテックコーディネーター」を名乗る織田さん。自宅をスマート化する機器を増やせば増やすほど、頭を悩ませてきたのがアプリの増加や操作性だった。

「方言」をなくせ

 「マターで共通のデータが落ちてくる。『パナソニック方言』や『三菱方言』がなくなり、すごい未来になると思いました」。

 織田さんがマターに期待するのも、共通規格としてメーカーをまたいだ接続を可能にするからだ。その接続方法も簡単。対応製品の電源を入れるとスマホが自動で認識し、そこから製品のQRコードを読み込めばいいだけ。スマートホームでは、機器をネットワークに接続するための「設定」がハードルになりがちであるため、これもマターはクリアしている。

 ただ、マター対応製品の日本での広がりにはスピード感に欠ける点も。織田さんは「認証の取得など市場が小さいわりに参入障壁があるのが日本。今は選択肢が少ないと感じています」と課題も指摘している。

「妖精」がお手伝い

 現状、スマートホームの普及を日本で加速するのは簡単ではない。「(スマートホームの)ソリューションを語れる人や、サポートできる人が増えないと『やらなくていいや』となってしまいます」(織田さん)。

 そんな織田さんがスマートホームに取り組む第一歩としておススメするのは、スマート化で実現したいシチュエーションを具体的にイメージすることだ。いろいろな人からスマートホームの相談を受ける織田さんは「この製品を使えばいいとかではなく、家族構成や、持ち家か賃貸かなどをヒアリングして、生活イメージに合わせて必要なものを絞り込んでいくことを大事にしています」と話す。

スマートホームでは、生活イメージやシチュエーションに合わせて必要な機器を絞り込んでいくことが大切という

 例えばセキュリティー。一般家庭のセキュリティーといえばセコムやアルソックなどが思い浮かぶが、「スマートホームは安心、見守りぐらいのニュアンスで考える方がいいです」(織田さん)とコツを語る。

 織田さんが自宅で実践しているのが、通常のドアホンとスマートドアホンの2台を設置すること。スマートドアホンは「友達専用」とし、スマホやスマートスピーカーで応答できるようにしている。「通常のドアホンは知らない人だから応答しない」といった運用で、留守番している子どもの安心感にもつなげている。

 「八百万(やおよろず)の考え方が好きで、スマートホームにもそういう考えを持っています。色々な『妖精』が頑張っていて、スマートホームとして会話できているような感覚です」。IoT機器やセンサー類などを「妖精」に例えつつ、スマートホームの現状に真っすぐ向き合う織田さん。「妖精」たちが頑張ってくれるおかげで、いつの間にかスマートホーム化している未来への期待に胸を膨らませている。