2025.04.09 「この服あり?」 コーディネートの相談に乗るアプリがドコモから独立 起業した飯野健太郎CEOに聞く㊤

 服選びに悩む人が自身のコーディネート写真を投稿するだけで助言を受けられる――。そんなファッション相談アプリを提供するcoordimate(コーディメイト、東京都渋谷区)が、NTTドコモグループの新規事業創出プログラムからスピンアウトし、着々と利用者を増やしている。デジタルの力を生かし「試着体験」の変革に挑む飯野健太郎代表取締役CEOに起業に至る経緯やアプリに込めた思いを聞いた。2回に分けて掲載する。

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 ―ファッション相談アプリは社員のアイデアを事業化する社内プログラム「docomo STARTUP」をきっかけに発案。昨年4月にスピンアウトしました。アプリの開発に至る経緯を教えてください。

 飯野CEO 「自分の服がダサい」と言われ続けて困っていたので、それを解消したかった。同じ悩みを持つ男性へのインタビューを通じて、異性からのフィードバックが少ないという実態が分かった。男性からは「服でかっこいいと思われたいわけではない。ただ、ダサいと思われたくないだけだ」という声も聞かれ、共感した。これらは、好きな服で自分を表現する人が多いアパレル業界では気づきにくい観点だ。

 ―アプリ開発の背景には、ドコモでの豊富な経験があります。記憶に残るエピソードは。

 飯野CEO 新人の頃は自分の力を過信して失敗を繰り返した時期があった。自分の存在意義について考えてしまうこともあった。そんな時、当時の課長が皿洗いを例えに挙げ、「一生懸命に働いているからこそ皿を割る。飯野のままでいい」と声を掛けてくれた。それをきっかけに仕事に対する意識が変わった。さらに、業績などで課長に恩を返そうという思いを強めた。

 ―仕事に向き合う際に意識していたことは。

 飯野CEO 課長との話をきっかけに目的という軸をぶらさないことを意識し、仕事に取り組んだ。アプリ開発もそうした姿勢で進め、開発決定から開発開始までの間に2カ月の余裕があった際には、ビジョンとミッションの言語化に取り組んだ。「チーム全体で何をしたいのか」「逆に何をしないのか」という判断基準を明確にしたことが、スピード感のある開発につながった。

 ―アプリは、アドバイス役の男女「mate(メイト)」が投稿者の相談に乗ることも特徴です。この仕組みづくりで力を注いだことは。

 飯野CEO SNS(交流サイト)やチャットツールのスラックを活用し、他人のコーディネートにアドバイスするというサービスが成り立つのかを検証した。SNSで自分や友人の写真を投稿した際には、コメントで多くの指摘を受けた。スラックでは、アドバイスが欲しいという男性ごとにチャンネルを作った。投稿者が好きなタイミングで女性たちに相談すると協力してくれた。

 アドバイス役を増やすため、知り合いや興味がありそうなドコモの社員らに声を掛けた。就活(就職活動)イベントでも、18~25歳の女性を対象に参加を呼び掛けた。イベントは大企業への就職という自身の経験談を生かせる場で、就活の相談に乗る代わりに協力してもらおうと考えた。資金をかけずにできることを考えると、自然とコストをかける場所も分かってくる。
(後編へ続く)