2025.07.04 広島の未来をつくる「ひろしまAIサンドボックス」 20件の挑戦が本格始動
新たなイノベーション・エコシステムの形成を目指す
広島県が、人工知能(AI)を活用したビジネスを県の活性化に結び付けようと動き出した。全国のAI開発者と県内企業や自治体をマッチングさせるプロジェクト「ひろしまAIサンドボックス」を立ち上げたもので、6月には、実証実験に挑戦する20の採択者が発表された。AIを地域課題の解決につなげる広島発のイノベーションに注目が集まりそうだ。
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今回のプロジェクトは、AI開発者からアイデアを募集する「自由提案型」と、県内企業や自治体からAIを用いて解決したい課題を募る「課題提案型」という2つのパターンで実施。集まった260件超のアイデアや課題を「新規性」「創造性」「汎用性」「地域貢献性」「開発体制」といった観点から審査した結果、採択者が決まった。
湯崎英彦知事は、東京都内で開かれた採択者の発表会で「挑戦することが当たり前の土壌、文化を作っていく」と力を込めた。
採択者は同月から8カ月にわたり、AIを活用したソリューションの開発や実験を推進。県は、総額2億円の補助金で後押しする。成果発表会は、来年2月に行う予定だ。
■自動電話応答
採択された1社が、医療・福祉分野でのITソリューションを展開するオノゴロ(広島市)。「AI自動電話応答ケアサービス」の開発に挑む企業だ。認知症患者が介護家族にかける電話をAIが一次受付し対応をサポートするというサービスの開発を狙う。
センシティブな対応が求められる認知症介護では、法的な責任や悪用防止などの壁に向き合う必要がある。
こうした課題を踏まえて同社の清水真一マネージャーは、「介護当事者の負担に思う気持ちと家族を見捨てたくないという気持ちを両方尊重できるサービスになる」と説明した。処理の高速化やより人間らしい応対など、サービスを磨き上げて、プロジェクトの期間終了までの完成を目指す方針だ。
■製造現場を変革
AIを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するスカイディスク(福岡市)も選ばれた。AIを製造業に展開し、生産計画の最適化を実現する。
具体的には、FAXや電話など多様なフォーマットの受注形態を同一化する個別開発のシステムを構築する。また、そのデータを生かし生産計画を自動立案するサービスを、クラウドを活用する「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」という仕組みで提供する。
少量多品種に対応できることに加えて、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)も工夫。自社で設定し変化にも対応しやすいという強みを生かし、製造現場を支えたい考えだ。
管理部経営企画兼アライアンスの塚本真歩氏は「人手不足や属人化の解消を目指す。広島は製造業の集積地なので、地域発展に寄与していきたい」と意欲を示した。