2025.10.08 まほうびん技術応用、高断熱材「TIVIP」 27年度量産めざす タイガーが日通と実証
タイガー魔法瓶が開発中のステンレス密封真空断熱パネル「TIVIP」
タイガー魔法瓶は、まほうびんやステンレスボトルで培ってきた真空断熱技術を応用し、ステンレス密封真空断熱パネルの開発に取り組んでいる。冷凍輸送や住宅建材など幅広い分野での利用を見込み、2027年度には量産化を目指す。
開発しているステンレス密封真空断熱パネル「TIVIP(ティビップ)」は、従来の断熱材の約10倍~25倍の高断熱(0.0025W/m・K以下)と、不燃性のステンレスのため高い安全性を実現する。
厚さも約10mmと薄い。同じ断熱性能を持たせた場合、グラスウールなら厚さ200mmが必要で、真空度を30年以上持続する長寿命も特長だ。
TIVIPは、薄いステンレス箔(はく)を2枚重ね、中に芯材となる素材を入れて回りを溶接し、内側の空気を抜いて真空引きにして作る。
薄いステンレス箔の溶接や真空引きなど、高度な加工技術を要することが多いことから、ステンレス密封真空断熱パネルを生産するのは同社のみだ。
現在、同社の門真工場(大阪府門真市)で試作ラインを稼働させているが、27年度の量産化に向け、量産ラインの構築にも取り組んでいる。機械化や自動化、省人化の課題を克服し、コストを抑えた量産体制を整えていく。
現在、同社は大阪・関西万博で日本通運との共同によるTIVIPを搭載した冷蔵コンテナの実証実験を行っている。万博に出展する飲食店(最大10店舗)に冷凍・冷蔵食品を供給している。
7日には、万博会場で報道陣にデモ実証を公開した。6時間ほど経過した冷凍うどんが暑いなか解けずに冷凍状態のまま飲食店に配送される様子を紹介した。
物流業界では、二酸化炭素(CO₂)削減とともに、人手不足や働き方改革により、いかに効率の良い輸送を実現するかが課題となっている。
TIVIPを活用すれば、長時間でも温度を維持でき、冷蔵トラックを使わず通常(常温)トラックでも冷凍・冷蔵食品が輸送可能のため、輸送コストの削減が見込める。
冷蔵トラックと通常トラックの配送を比較すると、冷蔵トラックの輸送コストが一般的に1.2倍ほど高くなるという。
また、異なる温度帯の荷物を同時に運ぶ「混載輸送」も可能。トラック台数の削減といった効率化に貢献するため、物流業界の関心は高い。
実証では、TIVIPを使って日通が保冷ボックス(プロテクトBOXサーマル)を開発し、使用している。日通の事業統括本部ネットワーク商品企画部の藏田隆典専任部長は「TIVIPを使った保冷ボックスは26年度中に商品化したい。今も医薬品、半導体、食品業界から引き合いをいただいている」と話す。
タイガー魔法瓶ソリューショングループ商品企画第2チームの南村紀史マネージャーは「当社の新規B2B事業として成長させたい。今後住宅建材やコンテナ型データセンターへの活用など、幅広い分野で事業化を目指す」と展望した。










