2026.03.18 大阪公立大、半導体基板上で「非鉛圧電材料」の高性能化を実証 環境との調和も追求
今回の研究の概要
大阪公立大学大学院工学研究科の吉村武准教授、大阪産業技術研究所らのグループは、シリコン(Si)半導体基板上でも鉛を含まない圧電材料のビスマス鉄酸化物(BFO)の結晶構造を外的条件で変化させることで、圧電特性を向上させることに成功した。この結果、鉛フリー圧電体の実用化に向け大きく前進するという。
今回の研究成果は、国際学術誌「Microsystems & Nanoengineering」3月17日号にオンライン掲載されている。
圧電材料は、力を加えると電気が生じ、電気を加えると変形する特殊な性質を持つ材料だ。この性質を利用してセンサーやイヤホン、スマートフォンの高周波フィルターなど、各種電子機器へ応用が広まりつつある。
現在、圧電材料の主流となっているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、人体や環境に有害な鉛を含む。このため、鉛を使用しない「非鉛材料」で高性能を実現することが強く求められている。鉛を含まないBFOは比較的高い圧電性能と適度な誘電率を持ち、センサーや発電デバイスに適している。しかし、必要な性能までには至らないため、実用化には至っていない。
そこで研究グループは逆に、外部から材料に力が加わることで変形する「引張ひずみ」に着目。発想の転換により、BFOの結晶構造を変えた。これにより、デバイスの作製で実際に使用されるSiウエハー上でも、「歪誘起構造相転移」による圧電特性の向上を目指した。
研究グループはもう一つのポイントとして、1回の実験で複数の条件を同時に評価する「二軸コンビナトリアルスパッタ法」という独自の成膜技術を開発した。1枚の基板上で、25種類以上の成膜条件の同時評価を可能にした。このため評価に要する時間が約半分に短縮。同時に、最適条件探索の発見に要する時間も、従来比で「約50分の1」に短縮可能にした。
吉村准教授は今回、世界最高の圧電性能を達成。さらに、高性能MEMS(超小型振動発電デバイス)を実現した。実用的な広帯域発電などを実証の成果として挙げている。
今回の研究は、環境調和の非鉛圧電素子の実現しており、半導体と圧電の融合による新規デバイスの展開という二つのニーズに応える点で意義がある。吉村准教授は「半導体製造で使用されるスパッタ法だけでSiウエハー上に高性能な圧電単結晶薄膜を作り、実際のMEMSデバイスとして動作することを示した。基礎と応用の両面で手応えを感じた。環境にやさしい非鉛材料の実用化につながる」とコメントしている。











