2026.10.05 AI「予兆ソリューション」開発 介護現場の先回りケア実現 パナソニックHD

「予兆ソリューション」で事後ケアから先回りケアを実現

予兆ソリューションの概要
予兆ソリューションの概要

レポートのイメージ
レポートのイメージ

 パナソニック ホールディングス(HD)は、介護施設で暮らす高齢者の健康状態の変化をセンサーデータとAI(人工知能)で早期に捉え、介護職員のケア業務を支援する「予兆ソリューション」を開発した。実証を重ね、2027年度の事業化を目指す。

 介護現場での人手不足、業務負担の増加といった課題に応え、利用者の健康維持につながるソリューションとして開発。

 従来の事後ケア中心から、先回りケアの実践につなげることを狙う。介護スタッフの経験依存からセンサーデータに基づく最適なケアにつながる気づきを提供することで、利用者の健康維持、施設運用の効率化などに貢献する。

 10月から3カ月間、社会福祉法人のユーアイ二十一(神奈川県横須賀市)と協力し、実際の介護現場での有用性と運用性を検証する実証実験を開始する。

 実証では、「健康状態変化解析AI」によるお知らせと、その根拠と観察のポイントを示すレポートが、現場スタッフによる状態確認やケア判断にどのように活用されるかを確認。ケアの参考情報としての有用性について検証を進める。

先回りケアで利用者の満足度向上

 日々の体調変化への気づきは、現場スタッフの経験や観察に支えられている部分も多く、状態変化が顕在化してから対応するケースも少なくない。

 利用者一人一人の健康状態の変化をより早い段階で把握し、先回りした状態確認やケアにつなげるためには、客観的なデータに基づいて変化の兆しを捉える仕組みが重要だ。

 予兆ソリューションは、センサーデータを活用し、一人一人の健康状態の変化の兆しを捉える健康状態変化解析AIと、解析結果の根拠や観察のポイントを整理して提示する「レポート生成AI」で構成される。

 変化の傾向と根拠をグラフや文章で可視化するとともに、介護現場における状態確認の参考情報として提示する。こうしたデータに基づき、現場スタッフの気づきにつなげ、利用者の状態確認から先回りケアの実践まで、一連のプロセスでの活用を図る。

 健康状態変化解析AIは、心拍数、呼吸数、体動状況、睡眠状況、ベッド在状況など、見守りセンサーから得られる生体情報・生活情報を活用。高齢者一人一人の平常時の状態を基準に、健康状態の変化の兆しを解析する。

 約2000人を対象とした性能評価では、高齢者一人一人について、日ごとの統計解析に加え、前日・前々日との差分を特徴量として解析。

 個人の平常時との違いを抽出することで、目視や本人からの自己申告だけでは把握が難しい変化にも、状態確認のきっかけとなる情報を提供できる可能性が示唆された。

 過去の介護記録に健康状態の変化が記録されていたタイミングを、健康状態変化解析AIが捉えた割合を示す再現率は89.4%、健康状態の変化が記録されていないタイミングで「変化あり」と評価した誤報率は10.5%だった。

 過去の介護記録を用いた後ろ向き分析では健康状態の変化が記録されていた事例で、記録時点より前からセンサーデータ上の変動傾向が確認された。

 レポート生成AIは、健康状態変化解析AIが捉えた健康状態の変化について、根拠となるセンサーデータや過去の状態との比較をわかりやすく示し、介護職や看護職など、多職種で共有しやすいレポートとして提示する。

 レポートは、変化傾向や観察のポイントを整理した文章とグラフで構成され、データの読み取りにかかる負荷軽減や、多職種間での情報共有を支援する情報としての活用が期待できる。

 予兆ソリューションは複数のセンサーデータを組み合わせて活用できる。特定の見守りサービスやセンサーに依存せず、すでに介護現場で普及している見守りシステム上で活用できる共通基盤として、機器ごとに異なるセンサー信号の正規化・特徴抽出を進める。

 同社技術部門事業開発本部CPS事業開発センター スマートエイジングケア部AIソリューション課の山口勝久課長は「介護分野では、先回りケアが重要で、予兆を客観的に把握することで、しっかりとしたケアにつなげてもらうことが大切」と話す。

 介護分野では、変化を「検知」するシステムの製品化はあるが、予兆を把握できるものはまだ製品化されていないという。

 「介護現場では多忙を極め、状態の変化を見逃すこともある。高齢者の体調が悪化してからケアするということでは負担もかかり、施設運営にも悪影響を及ぼす。予兆ソリューションはこの根本を変え、見つけたデータの兆しから最適なケアにつなげ、高齢者の健康維持に貢献できる」(山口課長)と話す。

 今後、社外パートナーとの協業も拡大しながら、勘や経験だけに頼らないデータに基づく介護の実現に向けた技術開発をさらに進めていく。