2020.07.09 【家電流通総合特集】 ヤマダ電機の取り組み 山田昇代表取締役会長に聞く家電住まいる館、新業態店転換で手応え
山田 代表取締役会長
新型コロナウイルスの影響でテレワーク関連商品やPC、巣ごもりによる調理家電などに加え、当社の場合、生活インフラとしての商品である家具やインテリア雑貨なども販売が伸びている。
店舗では、テックランドなどの郊外型が好調で都市型とは対照的だ。特に東京都心部のLABI店舗は、新型コロナの影響が非常に大きい。ただ、緊急事態宣言が全面解除され、直近では客足も前年並みまで戻ってきている。全体の売上げとしては家電以外の販売も貢献し、健闘している状況だ。
販売への影響はあった半面、コロナ禍は「家電住まいる館」といった新業態店で、住空間全体を提案する当社の方向性が正しかったことを再認識させてくれた。住宅メーカーのエス・バイ・エルを11年に買収し、〝暮らしまるごと〟の提案に転換してから約10年。ようやく軌道に乗ってきたと手応えを感じている。
今年10月には、「ヤマダホールディングス」として持ち株会社に移行する。経営をより透明化しガバナンスを利かせることで、利益をさらに出せる体質にすることが目的だ。
当社には52もの子会社がある。持ち株会社化でこれらの効率的な再配置も進める。家電事業については新業態店への転換による店舗改革にこれまで取り組んできたことで、一定の成果が出始めている。半面、住宅や環境など、まだテコ入れできる事業はある。コロナによる影響もあるため、速やかに変革を進めていく。
エス・バイ・エルやナカヤマ、レオハウスなど、これまでM&A(合併・買収)により、当社の事業に貢献するよう何年かかけて改革を行ってきた。
今後についても、家電以外の事業を成長させる原動力となるM&Aを進めていく。
大塚家具とシナジー発揮
家電事業では、大塚家具とのシナジーをさらに発揮していく。
赤字脱却を目指す大塚家具も、5月には新たな体制を整えていた。新宿ショールーム(東京都新宿区)など7店舗を改装してセールを行う予定だったが、新型コロナで1カ月遅れとなってしまった。ただ、家具と家電がうまく融合した良い店舗になったと考えている。
当社の利用客の95%はヤマダ電機の会員で、その中には大塚家具の利用客もいる。ヤマダ電機の店舗で大塚家具の商品を提案できるだけでなく、これからは大塚家具の店舗で家電を提案できるようにもなった。当社は家電、大塚家具は家具が主体。それぞれ客層が違うため、裾野が広がる。
家電から家具、特に高級家具の販売につなげるのはやはり敷居が高い。大塚家具の店舗であれば、それがやりやすくなる。家電を取り扱ったことで若い客層も来店しやすくなり、新規客も増やせる。ヤマダ電機と大塚家具のポイントも統合する予定だ。
新宿ショールームや有明本社ショールーム(東京都江東区)のような店舗は、全国展開はできない。大都市エリアにあるからこそ、サービスの質を維持できているともいえる。
遠方のお客さまにも店舗を体験してもらえるように、バーチャルショールームとしてネット上で店舗を疑似体験できるようにはしているが、今後はよりネット連携を強めていく必要がある。
大塚家具の商品を今後、全国の家電住まいる館に展開することについては、やはりサービスの質も関わってくるため、現実的ではない。有明や新宿のようなショールームを地方でつくるのは難しい。
家電住まいる館は現在100店超ある。都道府県にほぼ2店舗ずつ展開した格好だ。さらに増やしていくかどうかは検討しているところだが、やみくもに増やすようなことはしないつもりだ。
地方や都市部では店舗の役割はそれぞれ違う。物流やサービスを含めて最善の手を打っていく。
ウィズコロナに合う店づくり実践
当社は現在、全国に店舗網を展開できている。新規出店は、インショップといった小規模な店舗で商圏を補完する形にするのを基本にしていく。
それよりも既存店の強化を重視している。競合他社が新規出店で売上げ拡大を目指す中、当社は、家電住まいる館への転換に取り組んできた。既存店の魅力を高め、既存エリアで売上げを増やすことを重視し、〝暮らしまるごと〟の提案を掲げて店舗改装を続けてきた。
同時に、リアル店舗とネット通販との融合を目指す「YAMADAウェブ ドット コム」店への改装にも取り組み、全国で10店展開するようになった。ネット通販にどのように店舗を生かせるかを実験しているところだ。
ネット通販に店舗網生かす
ネットビジネスでは物流コストがネックになるが、当社は全国に店舗網があるため、これを効率良く活用すれば巨大な物流センターは必要ない。全国網がある当社の強みを発揮できると考えており、その最善策を模索している。既存店を利用したeコマースを確立したい。
ここにきて、店舗を持つ強みが生きてきた。潮目が変わってきたと感じている。
10年3月期に売上げが2兆円を突破し、その翌年には2兆1000億円強の売上げとなった。それが20年3月期では1兆6000億円となり、6千億円近く減った。当社が売上げを減らした分、他社が売上げを伸ばしたともいえる。
しかし、住空間全体の提案が軌道に乗ってきたことで、既存店が強くなっている。これから反転攻勢で、再び売上げ2兆円を目指していきたい。
SPA(製造小売り)商品が家電、家具ともに充実してきたことも、事業に貢献している。特に粗利への貢献度が大きい。
家具では、家電量販店らしいSPAも増えてきた。例えば、電気こたつのラインアップは、他社にはない多さだ。インテリア雑貨もSPAを増やしており、モノづくりと店づくりの両輪で成果が出てきている。
国内の家電は安定成長の市場。コロナの影響はあるが、今後大きく増減することはないだろう。ネット通販の販売が全体的に伸びているが、家電は結局、量販店のネット通販による購入シェアが高い。リアルとネットにうまく取り組んでいる量販が勝ち残っていく。これからは利益率にも差が出てくるはずだ。
郊外型のテックランドもこれからは役割が変わってくるだろう。コロナの影響が最も大きかった都市型LABIでは、今まで通りの店づくりでは対応できないと考え、さらなる改装を進めている。家電だけでなく、家具やインテリア雑貨など住空間全体を提案できる当社だからこそ、ウィズコロナにもフィットするような店づくりを実践していく。