2020.09.02 【抵抗器特集】5G関連需要が伸長で増加傾向新型コロナの影響、底を脱する
抵抗器の需要が低調に推移している。新型コロナウイルスが世界各国に広がり、経済活動に大きな影響を及ぼしており、依然として終息のメドが立っていない。しかも米中摩擦は長期化するばかりか激しさを増し、世界経済に大きな影響を及ぼしている。そうした中で、ここにきて各国における経済活動が再開され、抵抗器需要も緩やかに増加基調に転じている。依然として自動車の生産、販売台数は低調ながらも、第5世代高速通信規格5Gに絡んだ需要が伸びるとともに、半導体製造装置を中心に産業機器分野も設備投資が持ち直し、生産台数が上向いてきた。自動車はxEVを中心に新車の市場投入が相次いでおり、今後、車載用抵抗器の需要も立ち上がってくる見通し。
市場動向
JEITA(電子情報技術産業協会)のグローバル出荷統計によると、19年における抵抗器市場は後半から回復するとの期待もあったが、米中貿易摩擦問題の長期化などから終始低調に終わった。前年比12%減の1434億円にとどまった。
20年は新型コロナウイルスの感染症が世界中に広がり、世界経済が低迷。ようやく、ここにきて経済活動の再開で景気が上向きつつある。
抵抗器業界関係者によると、需要は4月ごろに底を打ち、月を追って増加傾向にあるという。その背景にあるのが、5Gに絡んだ基地局、スマートフォン向けの需要の伸長だ。関連して半導体デバイスの生産が上向き、しかも設備投資の再開で半導体製造装置の需要が立ち上がってきたことなどが、各社における受注増に反映しているとみられる。
また、新型コロナウイルスの感染防止で、テレワークが広がり、パソコンをはじめとするコンシューマ関連機器の需要が大きく伸び、在庫が減少したことによる生産のための需要も表面化した。
ただ、自動車は米中問題発生後から生産、販売が前年割れで推移し、新型コロナウイルスによってさらに深刻化。ここにきて動きだしたのは、環境保全、省エネ化をキーワードにxEVの新車が相次いで市場に投入され始めたため。今後、自動運転の推進とともに、xEVが車載用抵抗器需要をけん引していくものと見られる。
チップ抵抗器の動向
スマホをはじめ、各種モジュール、さらにIoT関連端末向けでは、小型、薄型化の要求が強まる。特に5G用スマホは、多機能化することから小型、薄型基板への部品実装密度がさらに高まる。
チップ抵抗器はより小型化が求められることになる。そのため、0603サイズ、0402サイズの需要が伸びる見通しだ。また、チップ抵抗器の搭載点数を削減するために2連チップをはじめとする多連チップも搭載。
スマホの高周波回路では、高周波帯で高精度抵抗器を要求する。そのため、抵抗値精度や抵抗温度係数などに優れた薄膜チップ抵抗器が用いられる。薄膜チップの場合も小型化が要求され、0402サイズまで小型化している。
電源回路では電流検出用途で低抵抗チップが用いられ、金属板チップ抵抗器は小型、ハイパワー、低抵抗が特徴。厚膜、薄膜、金属箔、金属板などの抵抗体がある中、金属板タイプの需要が伸びている。最小サイズは1005サイズ。
さらにモジュールでは部品内蔵基板で小型化する動きも見られる。部品内蔵基板の電気的接続には従来のはんだ接続に加え、レーザービアを形成することで、直接銅箔パターンとの接続を行う銅めっき接続方式が採用されている。
今後、IoTを取り巻く各種端末、モジュールの小型化がさらに進展する。そのため、チップ抵抗器に対してより小型化のニーズが高まる。次世代チップとして、既に0201サイズの提案が始まった。
車載用抵抗器は、相次ぐ新機能の採用によって、ECUの搭載点数が増加し、多くの用途で様々な抵抗器を使用するようになった。特にxEV化でモーター駆動関連のDC-DCコンバータ、インバータ、電池、チャージャ関連のパワー抵抗器は車載分野で需要を押し上げる。また、ADASなど安全系を中心とした機構強化はECUの搭載点数を増やす。この動きも抵抗器需要を伸ばす。
ミリ波レーダー、カメラをはじめADAS関連では、それぞれの制御回路を小型モジュール化する動きが見られる。そのため、チップ抵抗器は0603サイズ、0402サイズといった極小チップの採用が始まっている。
電源周辺部の回路向けに硫化に強く、硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が使用される。硫化ガス濃度が高い環境下で使用された場合、内部電極の硫化による断線という現象に対応する。
計測機器や検査・評価装置などの高精度を要求する分野は、薄膜抵抗器や金属箔抵抗器の主市場。金属薄膜抵抗器は、厚膜抵抗器と金属箔抵抗器の中間的な位置付けで、抵抗値精度プラスマイナス0.01%、抵抗温度係数プラスマイナス1ppm/度クラスの高精度、高安定を特徴としている。
金属箔抵抗器は、平面に圧延されたニクロム系金属箔を平滑なセラミック基板に接着し抵抗体とした抵抗器。0.14ppm/度(代表値)という最小抵抗温度係数(TCR)、プラスマイナス0.005%という最小抵抗値許容差、5ppm/年という非常に優れた長期安定性を特徴としている。
可変抵抗器の動向
機械的な位置の変化をアナログ電気信号に変換する可変抵抗器(ポテンショメータ)は、既に音量調整用ボリュームとしての用途は激減。現在、操作デバイス、さらに機械的な位置を電機信号に変換するため、ポジションセンサーとして利用される。計測機器、製造装置、ロボット、工作機械、FA機器、アミューズメントなどで市場を形成している。
可変抵抗器は、抵抗体の両端の端子から定電圧をかけ、抵抗体上を動く接点(しゅう動子)につながった端子との電圧比(%)でしゅう動子の位置を検出する。操作方法によって、回転操作ができるロータリタイプとスライド操作ができるスライドタイプに分類。
半固定抵抗器(トリマーポテンショメータ)は、回路の微調整としての用途に対応。抵抗体材料によってカーボン系、サーメット系などがあり、いずれも小型化が要求される。カーボン系では2型チップ、サーメット系は3型チップが最小。
市場は縮小傾向にあるが、試作品などの新製品開発、立ち上げなどでは依然として貴重な存在だ。