2020.09.15 【関西エレ産業特集】ピンチをチャンスに 新型コロナ後見据え

ニューノーマル時代を迎えてビジネス戦略を再構築し、コロナ対策を図りつつ成長に向け挑戦する関西のエレクトロニクス業界

 関西地区のエレクトロニクス業界各社は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けつつもコロナ後を見据え、またニューノーマル(新しい日常)時代に合わせて、ビジネススタイルを柔軟に変革させながら事業成長を目指している。〝ピンチをチャンスに〟変えるべく、不透明な経済情勢の中でも挑戦的な目標を掲げ、困難を克服しようとの強い思いを持ち臨んでいる。

 新型コロナの試練は、関西地区のエレクトロニクス業界各社の経営基盤に大きな打撃を与える一方、これを機に様々な変革を促し、強固な事業構造へと進化させる力も併せ持っている。

 関西地区のセットメーカー各社では、ニューノーマル時代に合わせて、新規事業の創出や新たな需要を生み出せるビジネスモデルの開拓など、果敢な挑戦を図る企業が多い。

 パナソニックでは、くらしアップデート業を掲げ、ソリューションメーカーへの変革を加速してきたが、非接触ニーズに対応して高度な顔認証技術やセンシング技術などを用いたソリューションの提案や、健康・清潔ニーズに対応した空間ソリューションなど、持てるコア技術をベースに新たなニーズに対応したビジネス戦略を加速させている。

 シャープでは、8K、5G、AIoT、PCI技術をベースに、新たにヘルス(健康・医療・介護)事業の開拓を図るなど、新事業創出に全力を挙げる。

 ダイキン工業では、〝攻め〟と〝守り〟の経営をバランス良く展開しながら、コロナ禍に対応した空気質ソリューションビジネスの強化を図るなど、目まぐるしい状勢変化に俊敏な対応を図り、事業成長を目指している。

流通の動き

 エディオンは、第1四半期が増収増益となるなど「巣ごもり需要」をうまく捉え健闘している。ネットショップの販売が好調で、受注前年比は第1四半期累計で152%を記録した。

 ステイホームによる在宅率の上昇で、家庭での快適な環境を求める需要増を捉え、玩具、調理家電、オーディオなど2桁成長の商品も多かった。自粛緩和後からは来店客数・売上げは回復傾向にあり、今期8店舗の新規出店を計画するなど意欲的な成長戦略に取り組む。

 上新電機も店舗での休業、営業時間短縮の中でもテレワーク需要や巣ごもり需要を捉え増収増益を達成、特に第1四半期のインターネット販売は1・4倍弱伸ばした。

 通期でも、消費者の郊外型店舗の回帰の動きやEC事業の進展が見られることから増収増益を予想している。既存店舗があるエリアは店の強みを生かし、それ以外はWebでの展開を強化するなど、柔軟な経営戦略で伸長を目指している。

携帯電話事業者の動き

 NTTドコモは、ドコモショップの出張イベントを徹底した感染防止対策を図ってコロナ前よりも積極的に展開する。

 サンプリングスタッフは手袋を着用し、場合により直接サンプリングせず、箱に入れて客に取ってもらうなど柔軟に対応。

 モックやデモ機は客から要望があった場合にスタッフが手渡し、利用後にアルコールで除菌。着席して応対する際には席の間隔を空け、なるべく横並びで対応するほか、対面時の接客フェンスやサイドフェンスも設置。イベント会場には各店舗に1台ずつ配備するスマートフォン除菌ツールを利用するなど徹底した安全対策で臨む。

 KDDIは、感染防止策にしっかり取り組んだ上で全てのauショップで通常営業している。ショップイベントは過度な集客を避け、店頭での案内にとどめている。

 同社は12、13日に滋賀県草津市内で「au PAY×滋賀県連携マイナポイント相談会」を開催、イベントを通じコロナ禍の関西経済を応援していく。

部品業界の動き

 電子・制御デバイス、産業機器関連各社でも新型コロナ感染症拡大後の業界を見据えて新たな施策を打ち出している。

 京セラは、足元では自動車関連市場における底打ちが見られるとともに、5G関連製品の需要増が見込まれるとして徹底したコスト削減とさらなる生産性向上に取り組む。

 谷本秀夫社長は「5Gやスマートフォン、PC、タブレットに使用される電子部品は比較的順調な受注があり、車以外の電子部品は比較的好調で電子部品は少なくとも前期並みはいくとみている。不透明な経済環境ではあるが、事業機会の獲得およびAI(人工知能)、ロボットの活用による生産性向上や原価低減などに取り組み、業績予想の達成に努める」と語る。

 オムロンは、主力事業のヘルスケアドメインとFAドメインで▽遠隔医療サービスへの挑戦▽5G普及への貢献(X線基板検査装置)▽医療向けトレーサビリティ▽自動化、ロボット化などの〝新たな〟省人化ニーズに取り組む。

 山田義仁社長は「世の中の変化から生まれる新たな社会的課題がビジネスチャンスの拡大につながる」と説明する。

 村田製作所は、リモート営業で顧客との接点をつくることに重点を置くとして、バーチャル技術交流会の開催、オンラインセミナー、ウェビナーの充実に取り組む。

 薗田聡常務執行役員営業本部長・東京支社長は「顧客との接点もこれまでのセールスだけでなく、セールスアシスタント、海外ではカスタマアシスタントと呼び内勤で営業のオペレーションをサポートしているメンバーがオンラインで顧客とつながる機会が増える。定期的にWebで情報共有する機会を積極的に設けたい。顧客のデジタルコードを見える化できるよう考えている」と言う。