2020.09.15 【関西エレ産業特集】FOCUS「ミニ富岳」のサービス開始

FOCUSが入居する建物(右)。左は理研R-CCSのビル

「ミニ富岳」と呼ばれるスパコン「PRIMEHPC FX700」「ミニ富岳」と呼ばれるスパコン「PRIMEHPC FX700」

 計算科学振興財団(FOCUS)は、「ミニ富岳」と呼ばれる富岳と同じCPUを搭載したスパコンの産業利用拡大に取り組んでいる。貸出料100円(ノード時間当たり、税別)でスパコンの最高峰「富岳」並みの性能が利用できるサービスを企業や大学などに提供、産業用へ用途を拡大する。

 FOCUSは08年、兵庫県、神戸市、神戸商工会議所などが共同で設立した。スパコンを活用した研究開発や産業利用の拡大、人材開発が目的。本部は、富岳が設置されている神戸市内ポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)に隣接する計算科学センタービルにある。

 同財団は4月、富岳と同じ英アーム社のCPUを搭載した富士通製産業用スパコン「PRIMEHPC FX700」の簡単な計算だけできるフロントエンドのノード2台を導入、8月末から時間貸しサービスを始めた。

 8月31日には本格的な計算ができる演算用2ノードを提供、その後順次増やし、最終的には6ノードにする。

 ノード時間当たりの料金は300円(税別)のところ、富岳が本格運用する21年度までは特別料金100円(税別)で提供。日本で事業展開する企業であれば、外資でもFOCUSに設置されたスパコン利用がインターネット経由で可能だ。

 FOCUSはこれまで、「京」をはじめとするスパコンの産業利用を促進してきた。

 同財団によると、スパコンを運用開始した11年4月から20年3月までの9年間で、累計325社がFOCUSスパコンを利用。利用テーマも合計515課題。20年度法人数(9月7日時点)は過去最高の192法人。

 櫻内亮久広報マネージャーによると、最近では同一企業でも複数部門での利用が進んでおり、FOCUSスパコン利用のメリットが浸透し始めたという。

 企業向けの研修も行っており、17年度は988人の受講者だったが、19年度は1740人が受講し、過去最高。企業内DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のため、部署丸ごとの受講が目立つ。最近ではコロナ禍のため、希望すればオンラインでも受講できる。

 FOCUSが目指すのは産業利用を目的にしたスパコンの普及。京や富岳を利用する前に、FOCUSで訓練という入門的な性格もある。

 また、操作方法の無料講習会を実施するなど、企業が利用しやすい環境をつくる。

 利用申請から3日以内で承認、利用する際は企業名を公表するだけで、研究内容や成果は公表の必要がなく、利用の垣根が極めて低いのもFOCUSスパコンの特徴だ。