2020.09.18 【ASEAN特集】フィリピン回復へさらなる投資を誘致

チャリート・プラザ長官

 コロナ禍でフィリピンの4-6月(第2四半期)GDP(国内総生産)は前年同期比16.5%減と、1981年以来、最大の落ち込みとなった。同国ではコロナの影響からの国内経済立て直しのために今後3年間で1兆3000億フィリピンペソ(Php=約2兆8000億円)規模の景気刺激策を導入。これにより計150万人の雇用を創出するとしている。

 一方、数カ月にわたる厳しいロックダウンから徐々に経済を再開。フィリピン経済特区庁(PEZA)のチャリート・プラザ長官は「停滞した投資の回復に向け、短期的および長期的な措置を講じて日本や米国、欧州からさらなる投資を誘致する」と意欲を見せた。

 PEZAは主要な投資促進機関の一つで、408のエコゾーンを管理。4584企業が登録し、約160万人を直接雇用している(19年実績)。フィリピンの商品輸出の64%、GDPの14.2%、額にして545億9700万ドル貢献している。

 20年はロックダウンの影響により、エコゾーン全体の投資は前年から40%以上減少、年間GDPは2-3.4%縮小するとみられている。

 PEZAが上半期に承認した海外と国内の総投資は前年より52%減少。しかし1-7月の海外直接投資(FDI)は約26%増加しており、製造業やIT/BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野の新規および拡張プロジェクトが寄与したという。

 感染拡大が広がる中、PEZA登録企業の上半期の商品輸出は248億1000万ドルで、前年同期比7%の減少にとどまった。またエレクトロニクス産業は近年、回復力を示しており19年の輸出額は前年比4%増の430億ドルを記録。同国の商品輸出の55%を構成し、今後も引き続き投資と輸出をけん引するとPEZAではみている。

 プラザ長官は「自動車や代替エネルギー分野で、ワイドバンドギャップ半導体(SiC/GaNなど)の需要が増加し、自動化やロボット利用が増える中、エレクトロニクス分野への投資拡大が期待できる」と述べた。

 PEZAが8月23-27日に実施した調査によると、登録企業の85%が既に稼働を開始。国の3分の1がロックダウン下にあった4月から25%拡大した。しかし、15%はまだ稼働できず、38万人余りの労働者が仕事を再開できないでいる。

 PEZAでは企業を支援するために短-中期の支援措置を展開。在宅勤務による売上高制限を30%から90%に引き上げ、12月31日までPEZAが管理する場所以外に、ワークスペースを設けることを認可した。