2020.09.30 【電波新聞70周年特集】電子デバイス市場・技術革新の先導役果たす

ニューノーマル時代を視野に、非接触入力デバイスの提案に力が注がれる

回路部品のダウンサイジング化は今後も進展する回路部品のダウンサイジング化は今後も進展する

 IT・エレクトロニクス技術の進化を背景に、電子部品技術の高度化が一段と進んでいる。

 今年始まった20年代は、第5世代高速通信規格5GやAI(人工知能)、IoTなどをキーワードに、人々の暮らしや社会が劇的に変化していく時代と想定される。

 さらに現在のコロナ禍は「ニューノーマル時代」到来を促し、イノベーションを加速させると予想され、電子部品・デバイス産業はこうした市場革新や技術革新の先導役として、今後ますます重要性が増す。

 電子部品・デバイスのグローバル需要は18年後半以降、米中摩擦やスマートフォン市場の飽和、さらに新型コロナの影響もあり、低調さが継続している。

 JEITA統計では19年の電子部品・デバイス世界生産額見込みは前年比8%減の7550億ドルで、電子部品、ディスプレイデバイス、半導体がともに減少した。世界の電子部品市場で4割弱のシェアを持つ日系電子部品メーカーの世界生産も同5%減となった。

 それでも、電子部品・デバイス産業の中長期の成長期待には揺らぐところはない。5GやAI、IoTなどをキーワードとした技術革新は様々な産業に変化をもたらし、Society5.0実現へ大きなイノベーションを引き起こしていく。

 「CASE」を切り口とする車の進化には革新的なデバイス技術が不可欠。FA・制御では、世界的な自動化ニーズの高まりで小型・高精度なマシン需要は今後も拡大し、それを支える制御デバイスの技術革新も進展する。

 来夏開催予定の東京五輪は5G、自動運転、スマートシティなどの先進技術のショーケースとしても注目され、五輪を契機に新たなイノベーションの広がりが期待される。

 現在の市場は、新たな技術潮流による大変革期を迎えている。電子部品・デバイス各社は中長期視点のR&Dを強化し、新時代に対応する。

 高度な技術開発力やソリューション力を武器に激動期を乗り越え、世界的プレゼンスをいっそう向上させていくことが展望される。

回路部品

 新型コロナウイルスの感染症拡大で回路部品の需要は厳しい局面にあるが、中長期的に成長は継続する。

 無線通信は第5世代高速通信規格5Gの普及が始まり、その後はさらに高速、大容量の6Gへとつながる。しかもIoT、AI(人工知能)などとの融合で新たなハード、ソフトウエアを創出する。

 自動車は現在過渡期にあるが、「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)は成熟領域に向けて技術が進化する。これらに伴う回路部品市場は新たな技術開発とともに拡大していく見通しだ。

 5Gから6Gへとつながっていくとみられる無線通信分野に向け、回路部品は高周波、高速、大容量化に対応して、より高性能な超小型部品の市場が形成される。

 MLCCをはじめ抵抗器、インダクタは現在の実用的な0402サイズの最小チップサイズは0201サイズに向けて採用が本格化する。

 しかもモジュールの小型、高機能化に伴い、基板内蔵用の部品は厚み0.1ミリメートル以下へと極薄化に向かう。

 車載用については、引き続き自動車の高機能化に伴う部品搭載点数の増加が回路部品の需要を押し上げていく。安全、快適化に向けた本格的な自動運転が動きだす。環境保全、省エネ化でxEVの普及が加速する。

 特に自動車特有の耐熱、耐振動・衝撃に優れた車載グレードの技術水準が高まり、小型化を伴いながら高信頼性部品の需要が伸びていくことになろう。

接続・変換部品

 接続部品は、コネクタは5Gなどの次期端末向けに高速対応かつ超小型の内部接続製品開発が進展する。基板対基板用は0・25ミリピッチ品開発が進む見通し。バッテリ接続コネクタの大電流化や防水技術の高度化も追求される。

 車載では、次世代車向けに車載イーサネット製品や自動運転車向けセンシングデバイス開発などが進む。産機用は次世代テレコム/データコム向けの高速伝送製品や光ソリューションの提案が活発化する見通し。

 変換部品は、次世代省エネモーターや完全自動運転車向けエンターテインメント部品などの開発が進展する見込みだ。

世界の半導体市場

 世界半導体市場統計WSTSによると、世界の半導体市場は、米中貿易摩擦など地政学的リスクを要因とする世界経済の失速を背景に、19年は前年比12%減と落ち込んだが、20年は同3.3%増の4260億ドルとプラス回復。21年はさらに拡大すると楽観的見通しを示している(6月発表春季予測による)。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で依然として先行き不透明な状態は続いているが、加速するデジタル化や巣ごもり需要の増加で、データセンターやPC向け半導体出荷が伸長。

 下半期もこの伸びは継続するとみられ、年末にかけて続々と登場する第5世代高速通信規格5G対応スマートフォンが需要を押し上げる。

 さらにコロナ禍で、生産停止など打撃を受けた自動車向けや産業機器向けでも一部、回復の兆しが見え始めており需要環境は良好なようだ。

 半導体市場の楽観的シナリオを受け、半導体製造装置材料の国際業界団体、SEMIも20年の製造装置販売額を前年比6%増の632億ドル、21年は同11%増の700億ドルと過去最高に達すると予想している。

 一方、業界に影を落としているのが、米商務省が9月15日に発効した中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)に対する半導体輸出規制。これを受け、ファーウェイのチップを受託生産するファウンドリ最大手の台湾TSMCが供給を停止した。

 韓国サムスン電子や日本のソニー、キオクシアなども出荷を停止した。これによりファーウェイだけでなく、大口顧客との取引を停止せざるを得ない供給側の経営への影響も懸念される。

 さらに米政府は、中国ファウンドリ大手SMICを輸出規制対象に追加する方針を打ち出し、さらなる波乱も予想される。