2020.11.20 【オーディオ特集】年末へ市場活性化に期待コロナ禍でさらに関心高まる
写真1 完全ワイヤレスイヤホンが市場をけん引
OTOTENが中止されるなど、オーディオ市場もコロナ禍の影響を受けているが、ワイヤレスイヤホン、ハイレゾオーディオ対応製品、4K8Kコンテンツ充実によるホームシアターへの関心が高まったこと、ストリーミングの定着、アナログレコードの完全復調やカセットテープの復権など、話題が多いのもこの市場の特徴。音楽や、動画ファン層が拡大していることは確実で、店頭にも客足が戻ってきている。年末に向けて市場活性化が期待されている。
コロナ禍でも高水準を続けているオーディオ製品出荷
グラフ1は、JEITAが毎月発表している製品ジャンルごとの出荷統計から、オーディオ関連製品の前年同月比の今年の推移をまとめたもの。
業界関係者への取材により、高級オーディオ製品の出荷は世界的に好調で「巣ごもり需要が追い風になっている」という話は聞けていた。
グラフ1は国内の状況。製品ジャンルはアンプ、スピーカシステム、ステレオヘッドホンに限られているものの、多少の落ち込みはあったが、いずれも高水準を保っている。
ヘッドホンとスピーカは大幅な伸長を記録している月もあり、好調さを示している。
ハイレゾ完全定着
追い風の要因はいくつもあるが、日本オーディオ協会(JAS、小川理子会長)が14年6月12日に発表した新音質規格〝ハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾ)〟の認知が進んだことが挙げられる。
音域(再生周波数幅)はCDの4倍以上で、音の大きさの階調(精細さ)は256倍以上のハイレゾ定義をクリアした製品に付与されるハイレゾロゴマークを付けた製品が増えてきて、ユーザーが安心して購買できる環境が整ったことが背景にある。
ハイレゾワイヤレス製品も増えた
JASは、18年11月28日に〝ハイレゾオーディオワイヤレスロゴ(ハイレゾワイヤレス)〟の導入を発表した。ワイヤードのヘッドホン/イヤホンに限られていたハイレゾロゴ付与が、ブルートゥースを使うワイヤレス接続製品も対象になった。
〝ハイレゾワイヤレスロゴ〟ライセンスの認証条件は、データを圧縮(エンコード)して無線で送り、伸長(デコード)して元のデータに戻す〝コーデック〟の認証、そのほかの回路も含む〝プロダクト〟の2項目が〝ハイレゾ〟の規格に適合していること。
コーデック認証は、聴感評価とテスト音源と評価ツールを使った試験でスペッククリアが求められる。この認証製品が増えたことも好調の要因の一つ。
完全ワイヤレスイヤホンがヒット
完全ワイヤレス製品に代表されるブルートゥース搭載製品は、ヘッドホン/イヤホンの半数以上を占めており、市場をけん引している(写真1)。グラフ2は、Bluetooth SIGのリポート「市場動向2020」に掲載された、「ABIリサーチ2020」のデータを引用してまとめた、ブルートゥースオーディオストリーミング機器の年間出荷台数の推移。
引き続き、20年から24年まで、ブルートゥース規格は年平均成長率7%でオーディオ市場を押し上げていくと予測している。
アナログレコードの定着も
ハイレゾの普及は一切デジタル圧縮していないアナログレコードへの関心を高め、ブーム化していることもオーディオ製品の伸長の追い風だ。
ハイレゾ、アナログレコードの新旧トレンドの好調は根強いと考えられている。
演奏家は、作品をCDなど光メディア、デジタルネット配信、アナログレコードの三つのメディアでリリースすることがグローバルで定着している。
店頭のアナログプレヤーの充実ぶりは、完全ワイヤレスイヤホンに引けを取らない(写真2)。
広がる新たなリスニング様式
イヤホン/ヘッドホンと、スマホなどの高音質モバイルデバイスは、いつでもどこでも音楽を楽しむ、新しいリスニングスタイルの代表格だ。
スポーツをしながら音楽を聴く新スタイルは、アスリートたちがブームのきっかけをつくった。ランニングやトレーニングをしながら使える専用モデルも充実してきた。
室内でもイヤホン/ヘッドホンで音楽を聴くスタイルも、巣ごもり生活で家族同士の干渉を避けて、好みの楽曲を聴くために定着し始めている。
2台のスピーカを正面に置き、音楽鑑賞する旧来のスタイルとは異なり、生活空間全体に音楽を満たす、ブルートゥーススピーカの活用も、新リスニングスタイルとして普及し始めた。
世界中が厳しい情勢下にあるが、ネットを通じたミュージシャンのグローバルな活動は活発化している。コンサートの配信も盛んになった。
人類だけが享受できる文化的娯楽の音楽を、いつでもどこでも楽しめる環境を支えているオーディオ市場にも新たな様式が浸透。年末に向けて、さらなる市場活性化が期待されている。