2020.12.04 データセンターを全国各地にブロードバンドタワーの藤原会長兼社長CEO

ブロードバンドタワーが東京都内で運営するデータセンター

藤原会長兼社長CEO藤原会長兼社長CEO

 データセンター事業大手のブロードバンドタワーの藤原洋会長兼社長CEOは、電波新聞のインタビューに応じ、10年後を視野に全国各地に中小規模のデータセンター(DC)を整備する将来構想を明らかにした。DCの企画から運用・保守まで一貫支援してきた実績を土台に地元企業と連携し、人口減少や雇用創出などの課題に直面する地域経済の活性化を後押し。「日本中のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)化を手伝う企業を目指したい」考えだ。

 四つの変化

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に「ニューノーマル(新しい日常)」時代が訪れる中、DXを支えるDCの役割が増す方向にある。こうした潮流を踏まえて藤原氏は、「ポストコロナ社会では産業構造が大きく変化する」と予測した。

 注目する変化の一つが、サイバー空間とフィジカル(実世界)空間が一体化した「デジタル社会」への転換。蓄積したデータをAI(人工知能)で解析し、分析結果をヘルスケアやスマート工場などの成長分野に応用して社会課題の解決につなげる動きだ。

 藤原氏は「ビッグデータをAIで処理し、何が起こっているかをリアルタイムで分析する仕掛けが必要。こうしたニーズに応えるデータセンターを用意したい」と強調。加えて、「金融革命」「経済の地域分散」「中小企業DX」といった変化も一気に起きるとの見方も示した。

 経済の地域分散

 経済の地域分散と中小企業DXが進む次代を見据えて打ち出したのが、今回の構想だ。藤原氏は、新型コロナウイルスの感染拡大を機にテレワークが急速に広がる中、「今後10年で人口が地域に分散し、新たな産業をつくる経済活動も各地で進むだろう」と分析。その上で、「中小規模のデータセンターを整備し、経済の地域分散を後押ししたい」との考えを示した。

 具体的には、地域でデータ産業を育て、新たな雇用の創出につなげる可能性に熱い視線を注ぐ。例えば、特産品など各地の魅力をデータ化し、分析結果を観光客の誘客につなげるといった展開が想定されるという。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の観点から、DCの電源に相性がいい水力や地熱発電などの再生可能エネルギーを生かす展開も視野に入れており、多面的に「地方創生」に貢献したい考えだ。

 5Gに熱視線

 藤原氏は、DCが第5世代高速通信規格5Gなど、デジタル時代の新潮流にどう関わるかについても言及。「データセンターはIoTとAIを支える第5世代に突入した。そこで存在感を高めたい」と意欲を示した。

 同社は2000年の設立以来、DCを東京都内4カ所、大阪1カ所の計5カ所に構築し運営。18年8月には、5G時代のDCを標榜する「新大手町サイト」を都内に開設した。今後とも「ネットワークの接続性が高い」ことを強みに一段と実績を拡大。「高速大容量」「低遅延」「多接続」という5Gの特徴を生かしたサービスも下支えしたい考えだ。

 総務省は6月、5Gの次の世代「6G」へ向けた戦略「Beyond 5G推進戦略」を公表。25年に6Gの主要技術を世界に示す目標を掲げた。こうした流れもにらんで藤原氏は、「新しい通信インフラに変わる過程で大量に発生する情報がデータセンターに集まってくる。自らもデータを分析し、顧客の分析ビジネスも支援したい」と力を込めた。

 DCの建設や運用を通じて蓄積したノウハウを不動産事業者に提供する考えも強調。新型コロナの感染防止対策の観点から人が密集する都市部のオフィス需要が減少傾向にある中、「不動産事業者のビジネスをデータセンターに広げることをサポートしたい」とも述べており、同社の挑戦の舞台はさらに広がりそうだ。