2020.12.18 TOAが宝塚に新研究開発拠点社内外の人や情報が集まり共に価値を創り出す

TOAの「ナレッジスクエア」(右から本館、ココラボ、オトラボ、タカラボ)

 TOAは、新研究開発拠点「ナレッジスクエア」を兵庫県宝塚市にオープンした。「知が生まれ、知が巡り、知が活きる―社内・社外の人や情報が集まり、つながり合うことで、共に価値を創りだす〝共創〟の場所」をコンセプトに、研究開発拠点の宝塚事業場を再開発した。

竹内 社長

 10日、宝塚市や設計・施工会社、金融関係などから25人を招いて行ったグランドオープン竣工式典で、竹内一弘社長は「この地に1962年(昭和37年)、社業拡大のための生産拠点として宝塚工場を建設した。その竣工式で当時副社長の中谷太郎が『メーカーの使命は良い品を世の中に送り出し、社会貢献することにある』とあいさつしたと社史に残されている。その後、国内外に工場を持ち、徐々に宝塚工場は新しい技術の研究や商品の開発拠点へと変化してきた。そして本日からナレッジスクエアと改名し、お客さまやパートナーさま、産官学、共創による社会に新たな価値を生み出す情報発信拠点となる。ニューノーマル時代における、社会の人々に貢献できる新たな商品やサービスをスピードを持って生み出していく拠点にしていきたい」とあいさつした。

本館1階のTOA Technical Plaza[dB]

 06年に宝塚事業場の再開発プロジェクトをスタートさせたが、リーマンショックでいったん中断。14年に若手で再開発コンセプトを知の創造とし、17年に開発機能の改革を盛り込み、社内外の人と情報が集まり、つながり合うことで共に価値を創り出す〝共創〟を最重要ポイントにすることを決定した。

谷口 執行役員

 18年3月から再開発に取りかかり、同年5月に新棟を着工。2万1329平方メートルの敷地に投資総額40億円、2年7カ月をかけて本館(延べ床面積6286平方メートル)の6階建屋を改修。博物館TOATechnicalPlaza〝㏈〟、管理・エンジニアリング執務エリア)、ココラボ(延べ床面積7511平方メートル、5階建ての新棟。R&Dフロア、各種試験室、プレゼンテーションルーム、カフェテリア)、オトラボ(428平方メートルの2階建てを改修。無響室、試験室)、タカラボ(延べ床面積906平方メートル、2階建ての新棟。文書保管庫)、ナレッジスクエアガーデン(ナレッジスクエア西側に6000平方メートルの緑地帯と庭園施設を整備)からなるナレッジスクエアを竣工、グランドオープンさせた。

 430人の研究開発者らが、TOAの未来、未来の社会を演出したナレッジスクエアで、ユーザー、取引先、協力会社、大学や研究所といった専門機関などと交わり合いながら、協業・共創を通じて未来につながる技術開発やビジネス創造に取り組む。

ココラボ中央に設けた吹き抜けスペース。ラボをガラス張りにしている

 宝塚事業場再開発プロジェクトリーダーの谷口方啓執行役員グローバル開発本部長は「ニューノーマル(新しい日常)時代における社会の人々に貢献できる新たな商品やサービスをスピードを持って生み出す拠点にしていきたい。今後、研究開発の重要性がますます高まる。当社が長年培ってきた音と映像の技術、ノウハウと社外のAI(人工知能)、センシング、ネットワークなどの知見を融合し、新しい発想で、きらりと光る新しいソリューションを提案、提供していく」と話している。

 「ナレッジ=知」と「スクエア=広場・人や情報が交わる場所」を組み合わせて名付けたナレッジスクエアのコンセプト実践の場となっているのが新棟の「ココラボ」だ。一足先に19年6月竣工、同10月から研究開発業務を始めている。

 1階のエントランスホールでは人体検知機能搭載ネットカメラが来場者を検知し、大光電機の調光制御を用いて音と光の演出でもてなす。また、HOYAの音声合成技術により、大型ディスプレイに表示したAIアシスタントが来場者と対話しながらTOAのネットワークカメラ、ラインアレイスピーカ、ビームフォーミングマイクを使って画像センシングや音声明瞭化技術、製品を紹介する。3㍍法電波暗室、振動試験室、恒温恒湿試験室、分析室、塩水噴霧試験室、3D造型室などを設けた品質フロアにもなっている。

 2-4階はR&Dフロアで、2階が設計・試作・評価フロア。3階が企画・意思決定・コミュニケーションフロア。東和エンジニアリングの大型映像システムを設置しており、世界中の同社拠点とつながる。4階はシステム設計・検証、プロジェクトや工程ごとに自由に移動し、執務場所を選択できる適業適所フロア。NECの顔認証システム、NECソリューションイノベータが設計・開発した統合サーバーシステムを導入した。中央に吹き抜け階段があり、ラボをガラス張りにして〝見せる開発〟を意識した構造に仕上げている。

 5階にはアドバンスト・メディア、フェアリーデバイセズと協業した話者追尾型マイクや自動議事録作成システムを備えるストレスフリー会議室、スマートサウンド講演会場のプレゼンテーションルームとカフェテリアを設けた。能美防災の人にやさしい避難誘導システムも導入し、協業先との連携成果を体感できる。