2021.01.07 【2021年注目の先端技術特集】マイクロンが176層NANDを出荷 再び不可能を可能に

176層NANDインフォグラフィック

ダン・ドイル氏ダン・ドイル氏

[図1]メモリーの市況トレンド(出典:Gartner)[図1]メモリーの市況トレンド(出典:Gartner)

[図2]マイクロンのNANDの沿革[図2]マイクロンのNANDの沿革

[図3]マイクロンの176層NAND製品の概要(メリット)[図3]マイクロンの176層NAND製品の概要(メリット)

[図4]176層を実現した革新的アーキテクチャの概要[図4]176層を実現した革新的アーキテクチャの概要

[図5]176層NANDの厚さと密度向上の説明図[図5]176層NANDの厚さと密度向上の説明図

[図6]176層NANDメモリーの活用が想定される分野
[図6]176層NANDメモリーの活用が想定される分野

 30年間にわたりデータテクノロジーの開発とマーケティングの仕事を通じて、多くの人々の日常生活を改善する、様々な素晴らしいテクノロジーの開発に従事できたことは幸運であった。しかし、新技術である176層NANDが誕生したときほど興奮したことはない。これは、NANDの進化において新たな技術のマイルストーンとなる驚くべき成果である。176層NANDが飛躍的な進歩である理由を説明する前に、過去数十年間について振り返ってみる。

疑う者を退けて

 携帯電話、GPS、インターネットといった私たちが日頃慣れ親しんでいるいくつかの技術は、実用化されるまでに何年にもわたる開発期間を要し、基礎的な技術の上に層を重ねるように構築されたものである。例えば、携帯電話では、CDMA(符号分割多重アクセス、石原社長とPOP-KC現在普及している技術)、低ノイズ増幅器、デジタル信号プロセッサ、強力なマイクロプロセッサ、電池寿命が長い充電式バッテリ、ストレージ(NANDメモリーなど!)、その他多くの技術が必要となる。

 このような基礎的な技術を開発している間、反対論者から「そのアイデアは実社会で機能しない」という声を多く耳にすると、一部の人々が踏みとどまってしまう可能性があったことを思い出す。その後3年から5年経過して、あなたや私が毎日使用するデバイスに同じ技術が搭載されて公開市場に投入されると、私はひとりほほえんだものだ。しかし、時には私自身が疑う者であったことを認めなければならない。

 3D NANDが新しいアイデアであった頃を覚えている。2014年より前には、メモリーは主にシリコンウエハーの上部に直接積層するよう設計されており、面積を大きくすることにより水平方向に拡張して容量を大きくしていた。3D NANDは違う。垂直方向に積層して容量を増やす。実は、私は当初このアイデアは製造時に機能しないだろうと考えていた。しかし、前述の多くの技術と同様に、このアイデアは成功した。

不可能と思われたゴールを達成

 3D NANDの製造は画期的なソリューションだった。より低いコストを実現し、さらに多くの人々の間でその価値が浸透していった。

 マイクロンの176層NANDがマイルストーンといえるほど大きな進歩である理由はいくつかある。この技術では、初期の3D NANDのデザインよりも10倍近く密度が増大している。密度が10倍になったことにより、スマートフォンの機能がさらに向上し、保存容量がさらに大きくなり、より多くの人々が購入できるようになるため、日々の生活が向上する。また、当社の技術はクラウドストレージの基礎的な構成要素なども含む、あらゆる電子デバイスに普及すると予測している。

 私はこの最高クラスの成果達成に貢献できたことを大変誇りに思っている。この176層のデバイスは従来のものと比べ高密度であるだけでなく、革新的な回路設計により業界で最も高速なデータ転送機能も備えている。マイクロンのエンジニアはNANDの主要なアーキテクチャを変更して、この超高密度ストレージを設計、構築した。このNANDは今後数年間にわたりダウンストリームデバイスのイノベーションを可能にするであろう。

創造性に期待 

 本当に興奮する。この進歩は単なるエンジニアリングのブレイクスルーにとどまらない。この進歩によって自由がもたらされ、人々はより多くのことができるようになり、さらに深く学んで視野を広げることができる。マイクロンの176層NANDはデータを広く公開するための扉を開いた。さらに多くの人々がより高速かつ低価格でデータにアクセスできるようになるだけでなく、アクセスに使用するデバイスも性能が向上して小型化され、価格が低下して高速になる。

 そこで、今、私は感謝と畏敬の念が入り混じった気持ちで、「それはできない」というマントラを信じずにやり抜いた人々が、私たち全員の利益のために、不可能を再び可能にしたことを、改めてお知らせする。クリエイティブデザイナーや様々な最新テクノロジーやサービスのビルダーやイネーブラーが、この画期的な新しいデバイスを使用してどのように全ての人々の生活を向上させるか、この目で見るのを待ち切れない。

<Dan Doyle>

【著者紹介】

 Dan Doyle(ダン・ドイル)は、マイクロン米国本社のストレージ ビジネス ユニット でNANDコンポーネント マーケティング担当ディレクターを務めている。新製品の開発とプライシング、新製品のマーケティング計画の実施、プログラムマネジメントを専門としている。ドイルは、事業部門のマネジャー、IP技術の評価、製品および技術開発エンジニアまで、テクノロジー分野で多岐にわたる経歴と実績を有している。