2021.01.18 日本トムソン 直動案内機器を拡充「液晶潤滑シリーズ」に注力

軸受用液晶潤滑剤を封入した直動案内機器「液晶潤滑リニアウェイ」

宮地 社長宮地 社長

 日本トムソンは、微細化が進む半導体の製造装置向けなど、軸受用液晶潤滑剤を封入した直動案内機器「液晶潤滑シリーズ」を拡充している。

 宮地茂樹社長は「当社は、社会に貢献する技術開発型企業を目指す、を企業理念に掲げている。技術に立脚した事業こそが、当社の成長を支える」と技術重視の経営を語る。

 これまでの潤滑剤であるグリースは、潤滑油を粉末の増粘剤に加えたもので、機械の稼働による摩擦熱で潤滑油が蒸発し失われると潤滑できなくなり、機械は破損される。

 同社はこれまで、微細な樹脂パウダーをスリーブまたはプレートに焼結成形して作られた連通多孔焼結樹脂に内部空間に発生する毛細管現象を利用して多量の潤滑油を含浸させた「Cルーブ」を、直動案内機器に潤滑部品として組み込んだ製品を市場に提供している。

 液晶潤滑剤は、基油と増ちょう剤で構成されるグリースとは全く異なり、液晶化合物のみで構成され、その集合体同士が潤滑状態を形成する、今までにない新たな潤滑剤として同社が産学協同で世界で初めて開発した。

 従来のグリースの基油はバラバラの分子で潤滑しているが、液晶潤滑は分子の集合体を形成することにより、金属表面への密着性や真空特性、低発じん特性が向上し、蒸発についても極限まで抑えることができる。

 同液晶潤滑剤を封入した「液晶潤滑シリーズ」として、直動案内機器「液晶潤滑リニアウェイ」を19年11月に発売し、20年11月には製品を拡充。直動案内機器「リニアローラウェイスーパーXシリーズ」と、クロスローラーベアリングにも同液晶潤滑剤を採用した。

 液晶潤滑シリーズは常温大気中でフッ素系グリースの10倍を超える長期耐久性を示し、発じん量はリチウム石けん基グリースの10分の1未満という優れた発じん特性を持つ。

 高真空環境におけるアウトガスは、高温域でも優れた特性を示すほか、100度の条件下でも潤滑剤の重量減少はゼロ。蒸発による損失もない。フッ素系やリチウム石けん基グリースと比較して転がり抵抗が低く、軽くて滑らかな摺動(しょうどう)を実現する。

 宮地社長は「半導体は3ナノ競争が活発になるなど、超微細化が進んでいる。このため、半導体製造装置にもますます高精度化が求められる。液晶潤滑剤を封入した直動案内機器は半導体製造装置に最も適しており、半導体製造装置メーカーで評価試験も進んでいる。ボールねじタイプやメカトロのシステム製品にも広げたい」と話す。

 液晶潤滑シリーズに加えたリニアローラウェイスーパーXシリーズは、剛性の高いケーシングに4条列の円筒ころをバランスよくパラレルに配置することにより、滑らかな走行と高い信頼性、安定した精度と剛性を実現した高性能なローラータイプの直動案内機器。重荷重や変動荷重が負荷されたときも弾性変位量が少なく、安定しているので、振動・衝撃を伴う箇所での使用に適する。

 クロスローラーベアリングは、内輪と外輪の間にローラーを直交させて配列したコンパクトな構造の軸受であり、ローラーの直交配列によって、あらゆる方向の複雑な荷重を1個で同時に受けることができる。コンパクトで高い剛性と回転精度を必要とする産業用ロボットなどの旋回部に広く使用されている。