2021.01.18 再エネ電気を自営線で直流供給NTTアノード、全国ビジネスに向けて国内初実証

通信ビル敷地内に設置された太陽光発電設備

発電設備や蓄電池から地下ケーブルがつながっている発電設備や蓄電池から地下ケーブルがつながっている

校舎側に設置された、直流電気を受ける設備(写真はいずれもNTTアノードエナジー提供)校舎側に設置された、直流電気を受ける設備(写真はいずれもNTTアノードエナジー提供)

 再生可能エネルギーの開発などを手掛けるNTTアノードエナジー(東京都千代田区)は、グループ関連施設の太陽光発電設備で発電した電力を、自営線をつないだ別の第三者施設に供給する実証を始めた。発電時の直流のままで給電するため、電力ロスが抑えられるという。同社によると、こうした実証は国内初。全国に数多くあるグループ施設を活用したビジネスの拡大を見据えた取り組みだ。

 再エネなどで発電した電力は直流だが、大手電力会社などは、いったん交流に変換して系統で送電している。そのため、家庭のコンセントに届く電気は交流だ。家庭の太陽光パネルなどで自家消費する場合でも、パワーコンディショナで交流に変換してから、電化製品などで消費される。

 だが、直流から交流への変換時に電力ロスが起きてしまう。NTTグループでは、データセンターや通信設備が入った通信ビル内などでは、直流のまま配電する技術が用いられており、ノウハウを蓄積してきた。今回、その技術を外部への供給にも活用しようと、実証に取り組む。NTTアノードエナジー・スマートエネルギー事業本部技術部の担当者は「あえて直流のまま校舎に送ることで、効率化できることを確かめていく」と話す。交流による供給時に比べて、20%程度の電力ロスを削減できる想定だという。

 実証は、千葉市若葉区のNTT東日本の通信ビル敷地内に太陽光発電設備(出力59kW)と蓄電池を設置。道路を挟んで隣接する市立白井中学校の校舎に、電力会社の系統の電線を使わず、自前で約250メートルの地下ケーブルをつないで供給する。

ニーズや期待度も探る

 同中学校は、千葉市が災害時などの避難所に指定されている。実証では、発電した電気を蓄電池に蓄えながら、災害時などの停電の際に限って、校舎に電力供給する。送られた電気は、直流にも対応できるLED照明などで消費するという。実証を通して、電力の品質や、周辺機器にノイズが出ないかといった技術検証を進める。

 NTTアノードエナジー経営企画部は「直流での供給サービスがまだ一般的ではなく、技術的に安定性を保てるかを検証する。合わせて、避難所に指定される公共施設などに、ニーズや期待度があるのかも確かめたい」と話す。

 グループは、同様の関連施設を全国に約7300カ所持つ。実証は、こうした施設で再エネなどを普及させ、周辺の病院といった主に公共施設などを自営線で結び、電力供給するビジネスの拡大を見据えて取り組む。「大きな事業に発展させていきたい」(NTTアノードエナジー経営企画部)との方針だ。

 NTTアノードエナジーや東京電力ホールディングスなどは、20年4からスマートエネルギーシティの実現に向けて千葉市で共同実証を行っており、今回の実証はその一環。21年7月中旬までの実施を予定している。