2021.03.17 日立、ジョブ型雇用を一般社員に拡大4月以降に本格移行

 日立製作所は17日、職務内容を明確化して成果で処遇する「ジョブ型」人事制度について、4月から一般社員にも導入する方針を明らかにした。21年の春季労使交渉(春闘)で約2万3000人の組合員を巻き込んだ議論を実施。労使間でジョブ型への本格移行に向けた方向性について確認した。

 日立の労使は、14年度から管理職に先行導入したジョブ型の対象を広げる方向性について確かめた。CHRO(最高人事責任者)を務める中畑英信執行役専務は報道陣のオンライン取材に応じ、「(組合員は)総じて肯定的だ。世代に関係なく、自分のスキルを上げる意識が出てきた」と説明した。

 労使の議論で組合員からは、多様なキャリア選択や自己成長につながるジョブ型を肯定する意見が挙がる一方、業務の進め方や処遇制度への影響などについて具体的な説明を求める声も浮上。「社会イノベーション事業でグローバルに成長するためには多様な人材の活躍が重要」との認識で理解を求めてきた経営側は、「組合の理解が一定程度深まった」と評価した。

 21年度からは、社員一人一人が「自分ごと」と捉えて行動を変容するフェーズへと移行する。20年度までは、職務内容の詳細を規定した「ジョブディスクリプション(JD、職務記述書)」などの基盤を整備。この中で全ての業務を職種・階層別に分類し、約400種類のJDを作成した。

 来月からはJDを活用する段階に進み、キャリアを構築する意識の醸成につなげる。7月からは、社員がJDを踏まえて強化するスキルなどについて検討。来年1月以降には、希望する業務を上司に伝えて自己啓発する活動などを促していく。

 並行して管理職がスキルを強化する研修を受けるほか、職場内の対話も促進。給与体系のあり方については「拙速に変えることは難しい」(中畑執行役専務)ことから、労使で今後詰めたい考えだ。

電機大手のベアは8年連続

 春闘は同日、大手企業の集中回答日を迎え、大手電機メーカー各社の回答が出そろった。基本給を底上げするベースアップ(ベア)については、昨年の月額実績とほぼ同水準の実質1000円以上で決着した。電機大手のベアは8年連続。

 労組側は、昨年を1000円下回る2000円のベアを統一要求。新型コロナウイルスの影響で各社の業績がばらつく中、電機連合は統一要求基準で決めた1000円以上のベアを主要13労組全てで引き出した。

 日立の労組はベアに相当する賃金改善分として2000円を要求していたが、昨年実績を300円下回る1200円で妥結。昨年は福利厚生制度のポイント300円を含め1300円だった東芝は、ベア1000円で決着した。NECは昨年に続き、ベア相当分を500円とした上で福利厚生で利用できる500円相当のポイントを付与するという。