2021.03.24 【関西エレクトロニクス産業特集】中長期的視点で成長戦略コロナ禍から復活へ挑戦

コロナ禍で生活や仕事は大きく変化。ニューノーマル時代の新たなニーズに対応するビジネスモデルの構築に各社力を入れる

 関西地区のエレクトロニクス業界各社では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあったものの、非常事態宣言の解除など、やや状況が落ち着いてきたことを受け、ニューノーマル時代に見合ったビジネススタイルを模索。新年度以降の復活に向けて果敢に挑戦している。コロナ禍で見えてきた新たなビジネスチャンスも多く、中長期的な視点で成長戦略に力を入れていく。

 新型コロナ感染症拡大は、関西の経済にも大きな影響を与えた。関西経済連合会がまとめたアンケート調査(新型コロナウイルス感染症の影響)によると、業績が落ち込んだと答えた企業は約7割に上る。

 関西経済の活況に大きく貢献していたインバウンド需要の消滅は、多くの流通業者の業績に悪影響を及ぼしたほか、外出の抑制で小売業全体が厳しい状況を強いられた。また、輸出、投資抑制、雇用環境の悪化など、連鎖的に経済全体を停滞させた。

 一方で家電業界については、巣ごもり需要の拡大、健康・安心ニーズの顕在化などによって家電製品の需要が伸長するなど、プラスの効果も見られた。

 21年に入り、新型コロナ感染症第3波の影響で、2回目の非常事態宣言が出され、再び経済の停滞をもたらした。このほど感染者数の拡大鈍化などにより非常事態宣言が解除された。関西経済は復活に向けた再スタートを切ることになる。

 今月公表された近畿経済産業局の調査「近畿経済の動向」によると、生産は持ち直し、個人消費も一部弱含むものの持ち直し、設備投資は鈍化しつつも増加、輸出は前年同月を上回るなど、厳しいながらも一部に持ち直しの動きが見られる状況となっている。

セットメーカー

 関西地区のセットメーカー各社では、ニューノーマル時代に合わせて新規事業の創出および新たな需要に対応するビジネスモデルの構築を急ぎ、瞬発力をもって果敢に挑戦している。

 パナソニックは、非接触ニーズに対応する高度な顔認証技術や、センシング技術などを用いた健康・快適・生産性向上につながる空間ソリューションの提案など、コア技術をベースにした商品・サービスの開発で成長戦略を推進する。

 シャープも、8K、第5世代高速通信規格5G、AIoT、PCI技術を基盤に、新たにヘルスケア(健康・医療・介護)事業をはじめとする新事業創出に全力を挙げる。

 ダイキン工業では、〝攻め〟と〝守り〟の両輪でバランス経営に取り組みつつ、換気・空調技術を生かしてコロナ禍に対応した空気質ソリューションビジネスを強化するなど、業績回復を前倒しすべく注力していく。

家電量販店

 家電量販各社の大型設備投資は、地域のほか都市部でも進展。新たな大型物流拠点の開設もある。

 エディオンは、住友不動産がこの春にリニューアルオープンする複合商業施設・京都河原町ガーデン(京都市下京区)のキーテナントとして、「エディオン京都四条河原町店(仮称)」を開店する。施設の総売場面積は約1万3500平方メートルで、地下1階、地上8階建て。

 エディオンは大店立地法の届け出を3月時点で、近畿管内で1件行っており、(仮称)エディオン岸和田店(大阪府岸和田市)を新設予定だ。店舗面積は3361平方メートル。また、和歌山加納複合商業施設(和歌山市)にも核店舗として入る計画。施設の店舗面積は合計で3177平方メートル。4月2日にはエディオンイオンモール茨木店をイオンモール茨木(大阪府茨木市)にオープン予定。売場面積は711平方メートル。家電、情報、ゲーム・関連品などを扱う。

 上新電機は夏ごろ、大阪府茨木市の彩都エリアに西日本を広くカバーできる物流センターを開設する予定だ。倉庫面積は約11万6000平方メートル。地上5階建てで免震構造を採用。物流保有アイテム数は現行体制の20%増、EC出荷能力も2倍となる見込み。既存店舗はリニューアルによるドミナント化を推進する。

 関西ケーズデンキは大店立地法の届け出を3月時点で1件、近畿管内で行っている。ケーズデンキ堺遠里小野店(仮称、堺市堺区)を6月24日に開設する予定。店舗面積は3456平方メートル。

 コジマは27日に、コジマ×ビックカメライオンタウン茨木太田店(大阪府茨木市)を、同時オープンするイオンタウン茨木太田内に開く。店舗面積は約2300平方メートル。取り扱い商品・サービスは家電をはじめ、PC、スマートフォン、玩具、ゲーム、自転車、リフォームなど。

電子デバイス、産機、設備、情報通信

 電子デバイス、産機、設備、情報通信分野も、新型コロナウイルス感染症拡大による世界的な経済減速はあるものの、中国市場の早期復活や自動車産業の予想よりも早い回復、さらには半導体産業の活況、5Gの基地局設置や端末市場の立ち上がりなどもあり、21年3月期の市況は大きく変化している。年明け以降は半導体の品不足やコンデンサ、抵抗器などの需給ひっ迫が続く。

 21年3月期第3四半期(3Q、20年4-12月)、20年12月期(20年1-12月)業績を減収減益とした企業が少なくない中、村田製作所は巣ごもりによるPC、ゲーム機、スマホ向けが好調に推移。四半期ベースで売上高、利益とも過去最高を更新。3Qでも売上高、営業利益、当期純利益が過去最高を更新し、通期連結業績予想を引き上げた。

 日本電産も精密小型モーター、家電・商業・産業向けなどが業績をリードし増収増益だった。売上高は過去最高を更新。通期予想の利益項目を上方修正した。前年同期に営業・最終赤字だった松尾電機は、リチウムイオン電池用回路保護素子が堅調で微増収、損益全てで黒字転換した。大真空も増収、各利益項目で黒字化を果たした。両社とも通期予想を上方修正した。

 好調な半導体市況を背景に、TOWAは半導体樹脂封止装置、金型が伸びて増収となり、利益は全て大幅増益を計上した。島津製作所も主力の計測機器事業の売上高、営業利益が過去最高を更新。全体でも微減収ながら利益はいずれも増益だった。きんでんはコロナの影響が想定を下回り、純利益が前年同期を上回った。3社はいずれも通期予想を上方修正した。

 オムロンは制御機器、ヘルスケアがけん引し、減収ながら営業利益、税引前利益は増益を確保。通期予想を引き上げた。グローリーとTOAは、減収減益だったものの通期予想を上方修正した。

 強い企業の強さ、努力を続ける企業の底堅さが目立っている。