2021.03.24 【関西エレクトロニクス産業特集】 ポストコロナ時代に向けて 近畿経済産業局 米村猛局長

米村 局長

 新型コロナウイルスの感染が収まらない中、2021年度(令和3年度)まであと1週間余り。近畿経済産業局と近畿総合通信局が決意をもってコロナ禍で関西の電子産業界を後押しする。第5世代高速通信規格5G、ロボット、DX(デジタル変革)など産業界にとって明るい材料は多い。25年にはこうした先進技術の実証・実装の場となる「大阪・関西万博」が控えている。両局長が新年度を迎えるに当たり、決意を披露する。

産業支援のネットワークをつくる

AI・ロボ・3Dプリンタ、万博に向け様々な施策

 コロナ禍の中、事業継続の支援に全力を挙げる。同時に、ポストコロナを見据えて中小企業などの「事業再構築」支援や、「カーボンニュートラル」に向けた大きなプロジェクトも始動する。加えて、近畿経済産業局ではエレクトロニクス産業などに関係して、「ネットワーク」を意識した様々なプロジェクトを実施中だ。

 -中小企業のDX推進

 近畿総合通信局と一緒に21団体で「関西ものづくりIoT推進連絡会議(PIIK)」を組織し、IoTソリューション創出を目指している。例えば中小企業の悩み事に、延べ1200社が解決策を提案できるマッチングの仕組みや、製造現場のIoT導入の具体手順を紹介するセミナーを実施しており、好評だ。

 またDXは「技術でなく経営だ」と言われるが、全社的なDXを後押しすべく、「DX認定制度」などを設けている。その先には「DX銘柄」もある。「DX投資促進税制」も予定されており、身近なデジタル化への補助制度「中小企業デジタル化応援隊」もある。

 -サイバーセキュリティ対策

 リモート化もあり、弱点を突くサイバー攻撃が増えている。サプライチェーンの中で地域の中小企業が弱点とならないよう、まずは基本的なサイバーセキュリティの取り組みが重要。デジタル化の盲点にしてはいけない。

 このため、関西の産学官などと連携した「関西サイバーセキュリティ・ネットワーク」を形成し、活動中だ。例えば、この2カ月の間に「地域別セミナー」を2府5県の全てで行うほか、地域で形成されている「セキュリティコミュニティ」の一覧も公表している。多くの中小企業のセキュリティ担当者は一人だけと知り、悩みを共有し解決の糸口を見いだしてもらいたいと思って開始した。

 -AI(人工知能)導入

 「AIで業務効率化や省人化というが、具体的に何をすべきか分からない」や「どの程度の費用か心配」という悩みをよく聞く。

 このため、最新AI技術や導入事例の紹介セミナーや、AI活用による経営課題の解決方法を学ぶワークショップを開催している。最近、「ビジネスの現場に役立つAI導入・活用事例集と契約実務・知的財産の手引き」として、ユーザーとベンダーなど15の事例も示した。

 -ロボット化

 以前からの労働力不足の懸念に加え、新型コロナによって一層重要性が高まったのがロボット化だ。感染防止のためヒトを介さない製造工程が一層求められるが、把持や制御が困難な食品加工など、まだまだ導入が進み難いのが現状だ。

 こうした中、「i-RooBO Network Forum」と一緒に、システムインテグレータの育成や、ロボット未活用領域での導入促進のほか、ロボット・AI・IoTを複合的に組み合わせたスマート化に向けた実証支援を展開している。昨年11月には、ロボット導入実証拠点として(大阪府)泉大津市に「HCIROBOT・AI LAB」も開設された。

 こうした支援拠点やロボットメーカー、SIヤー、そしてユーザー企業の集積が大きいのが関西の特徴だ。多層的な、そして面的なネットワークをつくりたい。

 -3Dプリンタ

 2年前から全国をリードする形で産学官連携広域ネットワークである「Kansai-3D実用化プロジェクト」を立ち上げ、全国から400者を超える参加を得ている。現在、現場の「カイゼン」も意識した「3D積層造形による新たなモノづくりの変革モデル」の創出を支援中だ。去る15日には、「3D積層造形によるモノづくりプロセスのモデル化・成果発表会」も開催した。「モノづくりのデジタル化」の本丸であり、エレクトロニクス産業の力にもなるはずと確信している。

 -万博への取り組み

 あと4年で「大阪・関西万博」が来る。「いのち輝く未来社会のデザイン」、そして「未来社会の実験場」だ。単発のイベントでなく、「産業の力・地域の力」として残るものにしたい。関西一円で様々に新たな力が生まれるムーブメントを起こしたい。このため、様々な力、そして志を集めたい。切り口として三つ挙げたい。第1が「イノベーションの力」。例えば、当局と関西にある独立行政法人などの七つの支部がネットワークと支援策を糾合する組織「関西・共創の森」をつくった。イノベーションエコシステムを充実させ、万博で関西の力を見せたい。第2は「地域のブランド化」。10の地域ブランドが万博までに世界にアピールできるように議論を開始している。第3は「SDGs(持続可能な開発目標)」。この万博は「SDGs万博」でもある。先日、中小機構と協力し「中小企業のためのSDGs活用ガイドブック」を発行した。中小企業の本業をSDGsで捉え、一歩踏み出すきっかけとして、その先の万博を意識してほしい。

 ポスト/ウィズコロナ、デジタル化、グリーン化などの流れの中で、万博も具体的なターゲットに入る時期だ。エレクトロニクス産業において様々な取り組みが行われているが、これらのパワーを少しずつでも合成し、関西に大きなネットワークを出現させるよう、近畿総合通信局、国際博覧会協会、PIIKなどと一緒に、全力を尽くしたい。