2021.04.02 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<36>企業ネットワークをローカル5Gに移行する ⑤

 ローカル5Gは、「アクセス網」と「コア網」から構成される。

 アクセス網は、モバイル端末と基地局を電波で接続する役目を担う。その実体は、自己の土地や建物の構内に設置されるアンテナと基地局装置(機器、サーバー)になる。

 一方のコア網は、モバイル端末同士や業務サーバー、インターネットとの通信を制御する役目を担う。通信の制御にはモバイル端末の認証や、速度と遅延に関わるサービス品質の制御、セッションの確立やデータ転送の制御などがある。コア網には、構内に制御のための機器(コア装置)を設置するオンプレミス型とクラウド型がある。

 アクセス網にもコア網にもそれぞれ周波数や技術方式の違いがある。そのため、自営網をローカル5Gへ移行する際、周波数の選択に加え、アクセス網とコア網の方式などシステム構成を選択しなければならない。

多いサブ6の選択

 現時点では、周波数はミリ波(28ギガヘルツ帯)よりもサブ6(サブシックス、4.5ギガヘルツ帯)を選択する事業者が多い。その理由は、超高速や超高信頼・低遅延、多数同時接続といった5Gの能力をフルスロットルで活用できるミリ波よりも、比較的電波が扱いやすく、基地局の価格が安いサブ6を好むからだろう。

 システム構成は既存の仕組みが使えるNSA(非スタンドアロン)とフル5Gとも呼ばれるSA(スタンドアロン)があり、多くの事業者はSAを目指そうとしている。

 SAは、アクセス網に5G技術の5GNR方式、コア網に5Gコア(5GC)方式を採用する正式なシステム構成でフル5Gとも呼ばれる。対して、NSAはアクセス網に5GNR方式、コア網に4G/LTE(EPC)方式を採用する暫定的なシステム構成になる。まだ開発が進んでいない5Gコア網の代わりに既存のLTEコア網が利用でき、迅速な導入ができる特徴がある。

NSAが役に立つ

自営PHS網をローカル5G(NSA)に移行する場合、NSAが大いに役に立つ

 自営PHS網をローカル5Gへ移行する場合、このNSAが大いに役に立つ。「Band39」と呼ばれる免許不要な1.9ギガヘルツ帯(1880~1920メガヘルツ)は、標準化団体3GPPが定めたLTEの国際周波数帯の一つだ。

 日本では、その一部が自営PHS網と後継のsXGP(プライベートLTE)に割り当てられており、今後、公衆PHS跡地への拡張によってsXGPへの移行が進むとみられている。

 なぜなら電波干渉に厳しい病院や工場では、音声通話が安定している1.9ギガヘルツ帯を継続して利用したいからだ。同時に、3GPPでLTEの国際周波数帯の5GNR化が規定されたことを受け、日本でも1.9ギガヘルツ帯のNR化が検討されていることも背景にある。

 こうしたことからも構内エリア全体を1.9ギガヘルツ帯でカバーし、超高速や超高信頼・低遅延が求められる利用環境には、NSAを活用したローカル5Gの導入が当面の現実解と思える。将来、1.9ギガヘルツ帯の5G化が進めばローカル5Gへの全面移行がより簡単に進められるようになる。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉