2021.04.16 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<38>企業内にローカル5G人財を育成する ①

 今の季節、例年なら東北の桜の名城などを訪れたいところだが、そういうわけにもいかず今年もオンライン花見旅になりそうだ。

 そもそも江戸時代までは、城には桜の木どころか樹木はほとんど植えられていなかったという。敵が城を攻撃する際、樹木は絶好の隠れ場になってしまうからだ。明治6年、廃城令にて城が市民に公園として開放されるようになり多くの桜の木が植えられたらしい。

新人教育を成功に

 さて、いよいよ新人教育のシーズンが始まる。昨年の新人教育の時期は、コロナ禍で初めての緊急事態宣言が発令されており、各社は急きょオンライン教育に切り替えて対応した。慣れないオンラインに悪戦苦闘した関係者も多いだろう。そのため、今年は昨年の経験を生かし、是が非でも新人教育を成功に導きたいと願っている企業も少なくない。

 特に、今年は図らずも到来したニューノーマル時代を担う「DX人財育成」をテーマに掲げる企業が多いと聞く。ではDX(デジタルトランスフォーメーション)人財とはどのような人財なのか。2018年12月に経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」からひもといてみたい。

 ガイドラインによると、DXは「ビジネス環境の激しい変化に対応して、企業が変革する」こととなっている。次に、どうやって、誰のために、何を変革するのか--をみると「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品、サービス、ビジネスモデルを変革する」ことを指し「業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革する」場合もあるとしている。最終的なゴールは「競争上の優位性を確立する」と明記されている。

 そのためか最近はあらゆる業種業態の大企業のみならず、中小企業においても、この「DX」を新たな経営課題として加える企業が増えてきているのだ。

今年の新人教育は「DX」が目玉

DXの一翼を担う

 その際に「5G」は、「IoT」や「AI」などと共にデジタル技術の一つとしてDXの一翼を担う場合が多い。それゆえ、筆者がデザインする5G新人教育では、必ずDXから教えることにしている。

 本連載第22回で「5Gデジタルトランスフォーメーション」と題して、5GはDX実現のためになくてはならない存在になっていくと述べた通りだ。

 例えば、5Gの多数同時接続により、工場内に設備された多数のIoTのセンサーから、刻々と変化する情報をデータとして収集でき、5Gの超高速により、工場の膨大化したビッグデータをAIへ転送する。5Gの超高信頼・低遅延により、AIによるデータ分析の判断を即座に工場内のロボットへ伝えられるようになる。

 この5Gによるプロセス変革によって、工場を競争力あるスマートファクトリーに変身(トランスフォーム)させることができる。桜の木も、植林後、花が咲くまでは時間がかかる。ローカル5Gの花を咲かせるための人財育成をそろそろ始めよう。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉