2021.05.07 富士電機、23年度に売上高1兆円計画自動車、産業・FA向けパワー半導体生産を増強

富士電機の大容量IGBTモジュール「HPnC」

北澤 社長北澤 社長

 富士電機は創業100周年を迎える2023年度に売上高1兆円を目指している。半導体事業を成長領域に掲げて積極的な投資を継続し、21年度は同事業に前年倍増の410億円の設備投資を行う。需要が拡大している自動車向けや産業・FA向けのパワー半導体の生産を増強する。

 21年3月期(20年4月~21年3月)業績は、売上高は8759億円で前期比2.7%減だったが、営業利益486億円(同14.3%増)、最終利益419億円(同46.2%増)となり、過去最高益を更新した。

 北澤通宏社長は「10年度から18年度まで右肩上がりで業績を伸ばし、19年度は1兆円企業を目指す熱い思いでスタートしたが、米中貿易摩擦の影響で一転して減収減益に終わった。20年度は新型コロナ感染が世界に広がるとは全く想像もつかず、期首では業績予想が立てられなかった。中間期を終えた時点で減収減益の通期予想を公表した。最終的には想定外の好実績を収めることができたが、心配な1年だった」と振り返る。

 同社の事業はパワエレシステムエネルギー、パワエレシステムインダストリー、半導体、発電プラント、食品流通から成る。20年度の半導体事業は売上高1575億円(同15%増)、営業利益177億円(同82%増)と大幅な増益を計上し、業績をけん引した。

 半導体事業はパワーデバイス(IGBT)、電源制御用IC、パワーMOSFET、整流ダイオードなどパワー系が主力。日本や中国、欧米などの自動車の電動化を背景にxEV向けや、工作機械や産業用ロボットなど産業・FA向けの需要の拡大が業績の大幅な伸びに結び付いている。

 北澤社長は「19、20年度と苦しんだが、研究開発費と設備投資は絶対に落とさない方針で取り組んできた。パワエレシステム(エネルギー、インダストリー)事業と半導体事業を重点的に攻めていくことが成長の道だと考えている。半導体については21年度も積極的に投資を行う」と半導体強化を打ち出す。

 22年3月期連結業績は売上高9000億円、営業利益600億円、当期純利益420億円を計画。うち半導体事業で売上高1740億円、営業利益216億円を見込む。

 「23年に創業100周年を迎える。経営理念のスローガンに『熱く、高く、そして優しく』を掲げ、多様な個性を持った社員がチームで総合力を発揮し、23年度に売上高1兆円を達成するという高い目標に向かって挑戦する。そのためにも21年度はスピード感を加速する」と北澤社長。

 21年度の設備投資は全体で20年度の359億円から617億円に増額し、半導体は199億円から410億円へと倍増させる方針だ。前工程では8インチの生産能力増強、後工程では自動車向けモジュールの生産能力増強を進める。

 研究開発投資は20年度の336億円を21年度は364億円とし、半導体では123億円から130億円へと積極的な開発投資を継続。自動車向けIGBT、SiCモジュール、産業向け第8世代IGBT技術開発を推進する。

 同社の半導体工場は、前工程ではマザー工場の松本工場ほか山梨工場、富士電機津軽セミコンダクタ、マレーシア富士電機社があり、松本工場は8インチ生産能力を強化する。後工程では富士電機パワーセミコンダクタ、富士電機(深圳)社、フィリピン富士電機社、マレーシア富士電機社があり、マレーシアでは産業向け大容量モジュールの生産を増強する。

 パワー半導体の新製品も拡充している。20年度は鉄道市場をターゲットに、業界最高クラスの低損失性能を持つ最新の第7世代「Xシリーズ」IGBT素子を搭載した大容量IGBTモジュール「HPnC」の量産を開始。NC工作機械、汎用サーボ、産業ロボット、業務用エアコン、エレベーターなど向けに損失を大幅に低減した「XシリーズIGBT-IPM」も投入した。

 ディスクリートIGBT「XSシリーズ」では、数十kVAクラスのUPSなど幅広い容量帯の機器に対応するため、既存の650V定格品に加え、業界トップクラスの低損失を実現した1200V定格品をラインアップに追加した。