2021.05.27 【照明総合特集】ストックLED化率、50%達成5割超えてから本当の勝負
ストックのLED化は5割を超えた
IoT化がカギを握る
2030年度で既設照明(ストック)を100%LED化する-。政府が掲げるこの目標達成に向けて、国内の照明メーカー各社はLED照明の展開を加速してきた。20年度では、その半分となる50%のLED化を目標に掲げる。日本照明工業会(JLMA)によると、今年2月末の時点でストックのLED化率は51.2%に達し、計画通りに進んでいる。ただ、半分を超えてからが「本当の勝負」と言われており、IoT化と合わせたLED照明の新たな価値提案がカギを握ってくる。
国内の照明市場は、新型コロナ禍の影響で出荷が伸び悩んでいる。LED照明の普及期に市場は拡大したが、それも一巡したことで、もともと踊り場に入っていた。
そうした中、コロナ禍となったことで、非住宅分野を中心に設備更新やリニューアル、新築着工などの各種案件が延期や中止に。蛍光灯などの従来光源からのLED化といった案件は、すぐに対処しなければならないものではないため、先送りされる傾向が強まった。住宅分野でも、密を避けるためにリフォーム市場が停滞するなどの影響があった。
JLMAの統計では、昨年4月から今年2月までの照明器具の出荷台数は、前年同期比8.6%減の5855万6000台。従来光源はLEDに切り替わっている関係もあって前年から半減しているが、これは予想の範囲内だ。
ただ、LED照明に関しても減少幅が大きい。住宅用で同6.5%減、非住宅用(屋内)で同10.0%減、非住宅用(屋外)で同11.0%減となっている。メーカーからの出荷(フロー)はほぼ100%がLED照明となっているが、コロナ禍で需要にブレーキがかかった格好だ。
各社が注力するのは、ストックのLED化。既設照明は国内に約17億台あるとも推測されており、そのLED化がメーカーにとっても商機となる。
ストックのLED化は、2月末時点で住宅用が47.4%。非住宅分野のLED化が先行しており、屋内用は55.6%、屋外用は64.5%と推定されている。全体では5割超といった数値だが、既設照明の推定台数からすると、ストックにはまだ8億台以上もの潜在需要がある計算になる。
ただ、業界関係者が「5割を超えてからのLED化が本当の勝負」と指摘する背景にあるのは、交換しにくい用途ばかりが残っているからだ。
住宅分野では、新築に導入される照明器具はほとんどがLEDとなっている。半面、築年数の古い住宅ほど従来光源を使っている。そのLED化は、シーリングライトのように比較的容易に交換できる箇所であれば問題ないが、キッチン灯や玄関灯など、一部リフォームを伴うものもある。
これらのLED化は、費用面からも簡単には取り組みにくい。個人の対応によってしまうため、LED化が遅れてしまう。
非住宅分野でもこれは同じと言える。例えば、賃貸のオフィスビルであれば、テナントがLED化を推進する意識は希薄なケースが少なくない。オフィス移転などの際には原状回復しなければならないリスクがあるためだ。また、非住宅では一部LED化できない特殊用途も残されており、これらが「ストックの100%LED化」の足かせとなってくる。
半面、IoT化が進展したことで、LED照明もクラウド環境とつながり、「あかり」の提供にとどまらないサービスとの連携も提案されるようになってきた。これらは、照明単体の枠を超え、家、工場、オフィスなど、全体的な照明設備を踏まえた提案になってきている。
IoTが生み出す、これまでにない付加価値や利点が浸透するようになれば、ストックのLED化は、一段と加速することが期待できるはずだ。