エレクトロニクス商社は、さまざまな産業分野でIoTの活用が常態化する中、市場のニーズに対応した同分野向けIoTソリューションの開発、提案を加速している。このほど開かれた「Japan IT Week【春】」にも出展し、工夫を凝らしたIoTソリューションを競った。

　エレクトロニクス商社は勝ち残りを懸けて、協業やM＆A、新規商材の開拓、常態化したテレワークによるICT系需要の取り込み、第5世代高速通信規格5G・自動車関連ほか成長分野への対応など、多彩な戦略で事業の拡大に取り組んでいる。事業価値を高めようとソリューションの開発・提案に重点を置くが、中でもIoTを軸にしたソリューションを強化している商社が多い。

　「IoT＆5Gソリューション展」「組込み／エッジコンピューティング展」など11展示会で構成する第30回 Japan IT Week【春】（主催＝リード エグジビション ジャパン）が、5月26日から3日間、東京ビッグサイト青海展示棟で開かれた。エレクトロニクス商社も出展し、独自のIoTソリューションを訴求した。

　明光電子は、サプライヤーと協業しながら多岐にわたるIoTソリューションを提供しており、同展でもさまざまなソリューションをアピール。

　ルネサスのアナログ強化マイコンRX23E-Aとオープンイノベーション・プラットフォームのLeafonyとの連携、サーキットデザインの429メガヘルツ帯のLoRa無線モジュールとマクセルのIoT電源システムの組み合わせ、マゼランのセンチメートル級の位置精度を検出できる準天頂衛星「みちびき」対応のGNSS受信モジュールなどを披露した。

　東京エレクトロン　デバイス（TED）は、産業用組み込み製品の開発・設計、製造を主な事業とし、17年にTEDグループに加わったTED長崎が出展。データセンター（DC）ソリューションとしてサーバー室向けラックマネジメントユニット、接点監視ユニット、電流監視ユニット、電子錠管理ユニットなどを展示した。

　これらはサーバーやネットワーク機器の電流負荷による電源障害やラック内の温度上昇による環境変化、外部からの不正操作など、システムの安定運用に必要な環境をリアルタイムで見える化し、容易な監視でDCの運用管理の最適化を実現。接点監視ユニットによりドア開閉や鍵管理システムの故障判定も可能だ。ポート数の多さを生かして導入台数を減らすことでコスト削減にもつながる。

　PALTEKは、企業活動における環境負荷の軽減が求められる中、電子・電気部品、産業機械設備など多様な梱包ニーズに応えるRanpak社（オランダ）の次世代緩衝材システム「PadPak Guardian」を日本国内で販売している。Ranpak社はFSC（森林管理協議会＝木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関）認証を受けた紙をもとにした梱包資材とシステムを提供しており、紙梱包資材は独自技術で高い緩衝能力を発揮する。

　イノテックは、第6世代インテルCoreシリーズを搭載した自社設計／国内製造の小型組み込み向け産業用BOX型PC（パソコン）、CPUボードや、画像認識プラットフォーム「AIZE」などを出品した。

　産業用BOX型PC、CPUボードではVX-6020（Mini-ITXより約40％も小さいBayTrail搭載CPUボード）、EMBOX TypeRE950（組み込み用途に必要なI／Oを豊富に備えたリファンレスPC）、EMBOX TypeRE940LTE（nanoSIMカードの外部組み付け＋LTE通信接続可能PC）などを紹介。

　画像認識プラットフォームAIZEは、囲碁人工知能（AI）研究のディープラーニング（深層学習）技術によって自社開発した顔認証技術だ。例えば店舗設置カメラやPC、スマートフォンなどで顔写真を撮影し、画像解析に必要な情報を自動で切り取ってクラウド上でAIZEが画像解析を行う。解析結果はマーケティングやサービスなどに活用できる。

　ミタチ産業は組み込み技術を生かしたIoTソリューションを展示した。生産工程見える化パッケージ「miot」は反射型センサーを用いて生産工程をセンシング。生産数、進捗数、停止時間、環境センシング（温度、湿度、VOC、照度）で生産状況を可視化する。

　組み込み技術の一環として、センサーを複数組み込んでデータを収集、送信する同社独自のリファレンスボードも出品した。