2021.06.24 【カーエンターテインメント特集】

大画面ナビを求める声が多くなり、車種問わず装着できるモデルも増えてきた

大画面ナビを求める声が多くなり、車種問わず装着できるモデルも増えてきた大画面ナビを求める声が多くなり、車種問わず装着できるモデルも増えてきた

パイオニアは車室内をWi-Fi空間にするルーターを発売。車内エンタメの新しい姿を提案するパイオニアは車室内をWi-Fi空間にするルーターを発売。車内エンタメの新しい姿を提案する

ナビと連動したドライブレコーダーや前後2カメラタイプが人気になっているナビと連動したドライブレコーダーや前後2カメラタイプが人気になっている

 新型コロナウイルスの感染拡大で、改めてマイカー(自家用車)が注目されるようになり、市販カーナビゲーションシステムメーカー各社は、ナビの基本性能を強化するだけでなく、クルマでの移動を楽しむカーエンターテインメントにも力を入れてきている。自動車の車齢が伸びる中で、新型車だけでなく、既販車でも最新のナビやエンタメが楽しめるようになってきた。2021年の市販ナビ市場の動向を追った。

 20年の国内のカーナビ、カーオーディオなどカーAVC市場は、コロナ禍の影響での新車販売低迷、半導体工場の火災、世界的な半導体不足などの影響を受けて安定した製品供給ができない状態だったが、後半から需要が着実に戻ってきた。

 昨年秋以降は順調に市場が回復し、電子情報技術産業協会(JEITA)の出荷統計によると、5月のカーAVC機器市場は前年同月比78.1%増の441億円と9カ月連続のプラスとなり、出荷台数でも直近は堅調だ。

 カーナビが同42.8%増の35万5000台と2カ月連続のプラスになっているほか、カースピーカーも同54.6%増。ETC車載ユニットは同36.3%増と5カ月連続プラスに、ETC2.0対応車載ユニットは同62.2%増で3カ月連続のプラスとなった。

大画面化が進むカーナビ

 新車購入時にナビを装着する割合が増える中、この数年の市販ナビの流れは大画面化とエンターテインメント化、ドライブレコーダー対応などだ。特にこの1~2年は新車への装着だけでなく、既販車を意識した製品が多くなってきている。

 メーカーごとの製品コンセプトにも違いが出てきているが、各社で共通しているのはナビとしての基本性能を追求しながらエンタメや安全安心を提供していくことだ。純正ナビでは得られない使い勝手の良さなど、市販ナビだからこそ体験できる機能なども各社がしのぎを削るところだ。

 21年の最新モデルの動きをみると、大画面は当たり前になりつつある。各社のナビは標準の7インチモデルに加えて、8インチモデルを用意。いち早く大画面ナビに取り組んだアルプスアルパインは、車種専用設計にした大画面ナビを軸にした展開を図る。対して、これまで車種別にしか付けられなかった大画面ナビを汎用(はんよう)的に付けられるようにしたのがパナソニックだ。

 車種を問わず8V型や9V型が装着できるダッシュボードの前に浮き出るフローティング構造のディスプレーを採用したことで、新型車だけでなく、既販車でも非常に多くの車種に大画面ナビが付けられるようになった。

 この領域で独走するパナソニックは、業界初の10V型有機ELモデルを発売し、現在は460車種以上に装着できることをうたう。フローティングナビは、アルパインも車種専用で発売したほか、JVCケンウッドが昨年、「ケンウッド彩速ナビ」で9V型のフローティングディスプレーモデルを発売するなど注目されている。

 ナビの基本性能の進化も止まらない。地図表示にもこだわり、パナソニックの「ストラーダ」やポータブルナビの「ゴリラ」は、全国市街地図表示や実際の道路標識と同じ表示ができる機能を付けている。ケンウッドの「彩速ナビ」でも最新モデルは3D地図表示などを拡充したほか、スマートフォンのような使い勝手も実現した。

クルマのオンライン化も

 エンターテインメント機能も各社が力を入れる領域だ。各社はオーディオ機能の強化、高音質化を図っており、CDより高音質なハイレゾリューション音源への対応が当たり前になっている。周辺機器も充実しており、パイオニアやアルパイン、ケンウッドはナビだけでなく、スピーカーやアンプなども拡充。後席用のモニターも天つり型のほか、前席のヘッドレストに装着するプライベートモニターも増えている。

 エンタメ関連では、パイオニアが他社とは違うアプローチをかける。いち早くクルマのオンライン化に取り組み、Wi-Fi環境を車内に作ることでインターネットのさまざまな音楽や動画コンテンツを楽しめる。

 主力の高機能ナビ「カロッツェリア・サイバーナビ」には、以前から通信モジュールを付け、渋滞情報や各種車両情報などの収集や活用をできるようにしてきたが、2019年からNTTドコモのサービスと連携し、インターネットコンテンツを低価格・定額で楽しめるようにした。20年末からは車種を問わずWi-Fi環境を構築できる車載専用のルーターも発売。ネット動画をはじめ、ゲームなども好きなだけ楽しめる。

 コロナ禍でキャンプなどを楽しむ機運も高まっている背景から、キャンピングカー向けの提案も進む。パナソニックは唯一ブルーレイ再生ができる特徴を生かして提案を始めているほか、パイオニアもWi-Fi環境の構築という観点からキャンピングカー市場に注目している。

 昨今、あおり運転などの被害が拡大している背景から、ドライブレコーダーの導入も進む。単体のドライブレコーダーに加え、ナビ連動型の製品も増えつつある。最近はあおり運転の対応から前方だけでなく、後方視界の録画もできる2カメラ搭載モデルが人気だ。

 主要各社がナビと連動した2カメラドライブレコーダーの製品群を増やすとともに、ハイビジョン化なども進む。ナビ連動させることで、より高度な画像確認や録画などもできるため、ナビとセットにした提案も進む。

 JVCケンウッドがドライブレコーダーで地位を築いてきたが、パナソニックをはじめ、パイオニア、アルパインなども製品を投入。カメラ映像を使い前方車両の接近、車線逸脱警報を出す機能や、停車時のセキュリティー監視をする機能などを搭載するモデルも出てきている。

 安全安心機能では、高速道路などでの逆走検知と警告するモデルもある。パナソニックがいち早く展開してきたが、ケンウッドも逆走検知と警告などの機能を付けた。市販製品ならではの安全支援なども、今後さらに充実してくるとみられる。